JAK-STATシグナル伝達経路

ウィキペディアから無料の百科事典

JAK-STATシグナル伝達経路(ジャック-スタット・シグナルでんたつけいろ)は細胞外からの化学シグナルを細胞核に伝え、遺伝子転写と発現を起こす情報伝達系。免疫、増殖、分化アポトーシス、発癌などに関与する。JAK-STATシグナルカスケードは主に、細胞表面受容体ヤヌスキナーゼ(JAK)、STATタンパク質から構成される[1]。 JAK-STAT機能が損なわれたり、制御できない場合には、自己免疫疾患免疫不全症候群悪性腫瘍などが引き起こされることがある。

機構

[編集]
JAK-STAT経路の鍵となる段階

様々なリガンド、一般にサイトカインインターフェロンインターロイキン成長因子など)が細胞表面受容体に結合すると、JAKのキナーゼ活性が活性化される[2]。活性化されたJAKは、受容体のチロシン残基をリン酸化し、受容体にSH2ドメイン含有タンパク質結合部位が形成される。 SH2ドメインを持つSTATは、JAKによってリン酸化されたチロシン部位へ結合する。こうしてリクルートされたSTATもJAKによってリン酸化されて活性化され、活性型STATはヘテロ二量体またはホモ二量体として細胞核へ移行し、標的遺伝子の転写を引き起こす[3]。また、STATは受容体型チロシンキナーゼ上皮細胞成長因子受容体など)や、非受容体型の細胞質内のチロシンキナーゼ(c-srcなど)によるリン酸化も受ける。

この経路は、複数の段階で負の制御を受けている。サイトカイン受容体や活性化型STATは、プロテインチロシンホスファターゼによって脱リン酸化されて不活性化される。また、SOCS英語版と呼ばれる分子群はJAKに結合してリン酸化を阻害したり、サイトカイン受容体のリン酸化チロシンをめぐってSTATと競合することで、STATのリン酸化を阻害することが知られている[4]。また、STATはPIAS英語版によって、核内でいくつかのメカニズムによる負の制御を受けている[5]。例えば、PIAS1、PIAS3はそれぞれ、STAT1STAT3のDNAに結合してアクセスを阻害し、これらによる転写活性化を抑制する。

脚注

[編集]
  1. ^ “A road map for those who don't know JAK-STAT”. Science 296 (5573): 1653–5. (May 2002). doi:10.1126/science.1071545. PMID 12040185. http://www.sciencemag.org/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=12040185. 
  2. ^ Brooks, Andrew (2014). “Mechanism of activation of protein kinase JAK2 by the growth hormone receptor”. Science 344 (6185): 1249783. doi:10.1126/science.1249783. PMID 24833397. 
  3. ^ “JAK/STAT-dependent gene regulation by cytokines”. Drug News Perspect 18 (4): 243–249. (2005). doi:10.1358/dnp.2005.18.4.908658. PMID 16034480. 
  4. ^ “SOCS proteins: negative regulators of cytokine signaling”. Stem Cells 19 (5): 378–87. (2001). doi:10.1634/stemcells.19-5-378. PMID 11553846. 
  5. ^ Shuai K (2006). “Regulation of cytokine signaling pathways by PIAS proteins”. Cell Research 16 (2): 196–202. doi:10.1038/sj.cr.7310027. PMID 16474434. 

参考資料

[編集]

関連項目

[編集]