VCF

ウィキペディアから無料の百科事典

VCF(Voltage-controlled filter)は、電圧で音声信号の倍音成分を制御する機能。主にアナログシンセサイザーの音色制御に用いられる。

概要

[編集]

アナログシンセサイザーは、VCOで任意の波形を持つ音声信号を出力し、VCFでその音声信号を加工することにより、様々な音色を得る基本的構造になっている。VCFは入力された音に含まれる倍音をカットして音色を加工する「音色フィルタ」の役割を担う。

フィルタ種類の模式図。実際にはこれほど急峻な特性ではなく、傾斜した特性を持つ

VCFには主に以下の種類がある。

ローパスフィルタ(LPF)
ロー(低域)をパス(通過)させるフィルタ。周波数成分を高域からカットする機能を持つ。
ハイパスフィルタ(HPF)
ハイ(高域)をパスさせるフィルタ。周波数成分を低域からカットする機能を持つ。
バンドパスフィルタ(BPF)
任意の帯域(バンド)のみをパスさせるフィルタ。いくつかの機種ではこの機能は搭載されておらず、LPFとHPFを直列につなぐことで機能を得る。
バンドエリミネーションフィルタ(BEF、別称バンドリジェクトフィルタ:BRF、またはノッチフィルタ)
任意の帯域のみをカットするフィルタ。いくつかの機種ではこの機能は搭載されておらず、LPFとHPFを並列につなぐことで機能を得る。

LPFやHPFでは、減衰が始まる周波数を遮断周波数(カットオフ周波数)と呼び、-3dBの減衰のあるポイントを指す。BPFやBEFでは、残留・除去する帯域の中心を中心周波数と呼ぶ。VCFでは主に遮断周波数/中心周波数が電圧で制御される。

ローパスフィルタの次数による減衰傾度の違い

VCFは設計によって減衰傾度(ロールオフ特性)の違いがあり、次数が増すごとに-6dB/oct傾度が増し、一般的に-6, -12, -18, -24dB/oct程度のVCFが用いられる。例えばモーグ・シンセサイザーには-24dB/octのVCFが良く用いられ、オーバーハイムのシンセサイザーには-12dB/octのVCFが良く用いられる。減衰傾度は設計によるVCFの個性を測る1つの目安であるが、他の設計要素も音質には関わる。

モジュレーション(変調)

[編集]

外部信号で回路の動作(ここでは遮断周波数/中心周波数)を制御することをモジュレーションと呼ぶ。一般的にアナログシンセサイザーではエンベロープ・ジェネレーターLFOの制御信号をVCFのモジュレーションに利用することで、音色に時間的な変化がつけられる。

演奏された音程の変化に伴ってカット領域を変化させることを、特にキーボード・トラッキングと呼ぶ。例えば演奏された音程の基本周波数が440Hzで、カットしたい倍音が880Hzである場合、まずVCFは880Hzの音域をカットする様に設定される。だが次に1オクターブ上の音程を演奏した場合、基本周波数は880Hzに変化する。この変化の情報をVCFに伝えない場合、VCFは880Hzに変化した基本周波数をカットする様に作動してしまう。このようなことを避けたい場合、キーボード・トラッキングが用いられる。

レゾナンス(共鳴)

[編集]

Resonance (レゾナンス、またはリゾナンス。直訳すると「共鳴」)は、VCFのパラメータのひとつとして搭載されている機能。遮断周波数付近の倍音成分を強調する事で音色の変化を得る。またいくつかの機種では、特定の値を超えると自己発振を始め、それ自体を音源として利用することもできる。電子工学的にはQ値(クオリティファクター)がそれにあたる。メーカーによっては「Emphasis」とも呼称する。

関連項目

[編集]