オットセイ
オットセイ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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ナンキョクオットセイ Arctocephalus gazella の子ども | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Arctocephalinae Gray, 1837 | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
オットセイ | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
fur seal | ||||||||||||||||||||||||||||||
下位分類群 | ||||||||||||||||||||||||||||||
オットセイ(膃肭臍、海狗、英:Fur seal)は、鰭脚類アシカ科のうちキタオットセイ属(キタオットセイ)とミナミオットセイ属(ミナミオットセイ)の総称である。
アシカ科にはアシカとオットセイが属する。アシカ亜科・オットセイ亜科に分類されることもあるが、系統的には認められていない[1]。
分布
[編集]キタオットセイは北太平洋に、ミナミオットセイはアフリカ南岸、オーストラリア南岸などに生息する。
生殖
[編集]一匹のオスが複数のメスを独占しハーレムを形成する。ハーレムは一般に海岸に近い場所に形成される。メスをめぐる戦いに敗れたオスは、まとまって群れを作って生活する。その場合、居住地は内陸に入った不便な場所となる場合が多い。若いオスでは戦いに敗れても、戦いの訓練を積み体格が大きくなるまで待ち改めて戦いに挑む場合もあるが、多くのオスは再挑戦をする気力を失い、メスとの交尾の機会を持てずに同性の集団生活において生涯を終える。
特徴
[編集]耳たぶがある、四脚で体を支えて陸上を移動できる、前脚を鳥の翼のように羽ばたくことによって遊泳するなど、アシカ科特有の特徴をもつ。
アシカよりは若干小ぶりで、ビロード状の体毛が密生していることがオットセイの特徴である。オットセイの毛は、ごわごわとしたアザラシと異なり、つやつやとして柔らかく、暖かく、防寒性、装飾性に優れている[2]。
食性としては魚、タコ、エビを主食としているが、地域的にはペンギンを捕食する場合もあることが報告されている。
陸上だけでなく、水中でも睡眠を行う。この時、右脳を覚醒させたまま、左脳を眠らせることができる。陸上で眠る時は、人間と同様の方法で眠る[3]。
海の生き物だが、海水ではなく淡水でも生育可能である。いくつかの水族館では、オットセイを淡水で飼育している場合もある[4]。
利用
[編集]高価な毛皮や、さらには陰茎や睾丸(生薬名:海狗腎)が精力剤などの漢方薬材料として珍重されたため、乱獲により生息数が激減した。江戸時代初期の慶長15年(1610年)と慶長17年(1612年)に蝦夷地の松前慶広が徳川家康に海狗腎を二回にわたり献上し、家康の薬の調合に使用されたという記録も残っている(『当代記』)[5][6]。日本は1911年に膃肭獣保護条約を締結し、翌1912年発効の「臘虎膃肭獣猟獲取締法(らっこ・おっとせいりょうかくとりしまりほう)」を成立させ捕獲や所持を規制した。1957年には「北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約」を締結し(日本、アメリカ、カナダ、ソ連〈当時〉、〈1984年失効〉)[7][8]、保護の取り組みを行ってきた。
2006年現在、日本ではヴィタリス製薬株式会社(旧社名プロ・シール株式会社←オットセイ製薬株式会社)だけがオットセイ製剤(オットピン等)の製造を行っている。
オットセイ保護区
[編集]名前の由来
[編集]オットセイはアイヌ語で「オンネカムイ(onne-kamuy、「老大な神」を意味する)」、「オンネプ(onnep、老大なもの)」、「ウネウ(unew)」と呼ばれていた[9]。それが中国語で「膃肭」と音訳され、そのペニスは「膃肭臍」と呼ばれ精力剤とされていた。現代の中国語では「海狗」と呼ばれる。連綿語である。
日本では文明本節用集に「膃肭臍(ヲットッセイ)」の表記が見られるほか[10]、江戸時代ごろになると生薬名が種を指す言葉になっており[11]、和漢三才図会でも「をっとつせい」で解説されている。あまりにも一般的になったため、1957年に北太平洋のオットセイの保存に関する暫定条約が締結された際、出席した日本代表団がオットセイを英語であると誤解。英語でオットセイと説明しても理解されず、何回か発音を変えて言い直しを行うニュース映像が残されている。なお日本の法令に臘虎膃肭獣猟獲取締法がある。東北地方の海岸まで流されることもあり、三陸地方で「沖の犬」と呼ばれる生物の正体とされる[12]。
英語ではfur seal(毛皮アザラシ)と呼ばれ、アザラシよりも質の良い毛皮が取れるため、この名前がついたといわれている。
日本のオットセイ
[編集]日本海や銚子沖の太平洋が、キタオットセイ属の南限といわれる。たまに日本海側や北海道、東北地方の海岸に死体や、生きたまま漂着することがあるが、2006年9月9日、内陸部に位置する埼玉県川越市の新河岸川(今成2丁目付近の水田)で野生と見られる衰弱したオットセイ(後に「しんちゃん」と名付けられた生後1-2年の雄)が発見され、警察で捕獲し、翌日、上野動物園へ収容・保護された[13]。春、日本ではオットセイの群れが南下してくるため、このオットセイを太平洋に戻すことになり、放流に向けた馴致(野生に戻るリハビリ)を行うため[14]、12月4日に鴨川シーワールド(アザラシ授乳室)へ移され、トレーニングが行われた[13]。翌2007年2月下旬、オットセイの群れが見られたため、しんちゃんは3月8日に銚子の沖合い(約17km)にて放流され野生復帰した[15]。鴨川シーワールドでは今まで何頭か放流に成功している[16]。
展示は伊豆三津シーパラダイスなどの水産庁の許諾を得た一部の水族館、動物園で行われている。
分類
[編集]- キタオットセイ属 Callorhinus
- ミナミオットセイ属 Arctocephalus
オットセイをモチーフにしたキャラクター
[編集]ギャラリー
[編集]- ミナミアフリカオットセイ (ズーラシア動物園)
- ミナミアメリカオットセイ (鴨川シーワールド)
脚注
[編集]- ^ Wynen, L.P. et al. (2001) Phylogenetic relationships within the eared seals (Otariidae: Carnivora): implications for the historical biogeography of the family. Mol. Phylog. Evol. 21, 270–284 。2012/12/10見る
- ^ 『キプリングの日本発見』中央公論社、2002年、p518
- ^ “片側の脳だけ眠るオットセイ、誘発物質特定で不眠治療に光”. AFPBB News. (2013年2月21日) 2013年2月21日閲覧。
- ^ ダーウィンが来た! 〜生きもの新伝説〜 2013年9月1日放送 森で発見!オットセイの秘密基地
- ^ 宮本義己「徳川家康公と医学」66号、大日光、1995年。
- ^ 宮本義己 著「徳川家康と本草学」、笠谷和比古 編『徳川家康―その政治と文化・芸能―』宮帯出版社、2016年。
- ^ “三 わが国と各国との間の諸問題”. 外務省. 27 July 2018閲覧。
- ^ “オットセイ保護条約”. 日本大百科全書(コトバンク所収). 2018年7月27日閲覧。
- ^ 知里真志保「アイヌ獣名集:オットセイ」『知里真志保著作集 3.生活誌・民俗学編』平凡社、1973年、114-115頁。(もと北海道大学文学部紀要7、1959年)
- ^ おっとせいとは - コトバンク
- ^ 膃肭臍猟図説(おっとせいりょうずせつ) - 中央水産研究所
- ^ 海狗(かいく)とは - コトバンク
- ^ a b 保護されたキタオットセイがシーワールドへ「鴨川シーワールドからのお知らせ」南房総市 2006年12月4日
- ^ 広報川越No1142 2007年1月号 (PDF) 川越市 2006/12/25
- ^ えのすいトリーター日誌 「しんちゃん」海にかえる!新江ノ島水族館 2007.03.09
- ^ 海の生き物教室「オットセイ・しんちゃんの保護」開催「鴨川シーワールドからのお知らせ」南房総市 2007年2月6日
外部リンク
[編集]資料
[編集]- Roger L. Gentry. 1998 Behavior and ecology of the northern fur seal Princeton University Press