「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議
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「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」 に関する有識者会議(「てんのうのたいいとうにかんするこうしつてんぱんとくれいほうあんにたいするふたいけつぎ」にかんするゆうしきしゃかいぎ)は日本の第99代内閣総理大臣菅義偉(菅義偉内閣)及び第100・101代内閣総理大臣岸田文雄(第1次岸田内閣、第2次岸田内閣)の私的諮問機関。
2021年(令和3年)3月16日、設置決裁。同年3月26日、第1回会合開催。同年12月22日、第13回会合開催、報告書提出。
概説[編集]
衆参両院(衆議院:議院運営委員会、参院選:天皇の退位等に関する皇室典範特例法案特別委員会)によって示された「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に基づいて菅義偉首相によって開催された。
会合が全13回にわたり開催され有識者会議の開催中に菅義偉首相に代わって任命された岸田文雄首相に対し
①内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること
②皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とすること
③皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とすること
を主案とした報告書を提出した。
有識者会議のメンバー[編集]
- 大橋真由美:上智大学法学部教授
- 清家篤:日本私立学校振興・共済事業団理事長・慶應義塾学事顧問(座長)
- 冨田哲郎:東日本旅客鉄道株式会社取締役会長
- 中江有里:女優・作家・歌手
- 細谷雄一:慶應義塾大学法学部教授
- 宮崎緑:千葉商科大学教授・国際教養学部長
開催日程[編集]
- 2021年(令和3年)
- 3月16日 - 首相菅義偉が「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」の設置を決裁。
- 1.趣旨:「天皇の退位等に関する皇室曲籂特例法案に対する附帯決議」(平成29年6月1日衆議院議院運営委員会・同月7日参議院天皇の退位等に関する皇室典範特例法案特別委員会)の一において示された課題について、様々な専門的な知見を有する人々の意見を踏まえ議論し整理を行うため、高い識見を有する人々の参集を求めて、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議(以下「有識者会議」という。)を開催する。
- 2.構成
- 有識者会議は、別紙に掲げる有識者により構成し、内閣総理大臣が開催する。
- 有識者会議の座長は、出席者の互選により決定する。
- 有識者会議は、必要に応じ、関係者の出席を求めることができる。
- 3.庶務等
- 有識者会議の庶務は、内閣官房において処理する。
- 内閣官房は、必要に応じ、宮内庁、内閣法制局その他関係省庁の協力を求めるものとする。
- 第1回:3月23日(火)16:50~18:00
- 場所:総理大臣官邸小ホール
- 座長の選任
- 内閣総理大臣挨拶
- 会議の運営について
- 皇室制度等に関する説明
- 有識者ヒアリングの実施について
- 第2回:4月8日(木)16:45~19:30
- 第3回:4月21日(水)16:45~19:00
- 第4回:5月10日(月)16:45~19:00
- 第5回:5月31日(月)17:00~19:15
- 場所:総理大臣官邸大会議室
- 有識者ヒアリング
- 君塚直隆:関東学院大学国際文化学部教授
- 曽根香奈子:公益社団法人日本青年会議所監事
- 橋本有生:早稲田大学法学学術院准教授
- 都倉武之:慶應義塾大学准教授
- 第6回:6月7日(月)17:00~19:15
- 第7回:6月16日(水)17:30~19:00
- 場所:総理大臣官邸大会議室
- 自由討議
- 第8回:6月30日(水)17:30~19:00
- 場所:総理大臣官邸大会議室
- 討議
- 第9回:7月9日(金)15:30~17:00
- 場所:総理大臣官邸小ホール
- 討議
- 第10回:7月26日(月)16:45~18:15
- 場所:総理大臣官邸大会議室
- 討議
- 第11回:11月30日(火)16:30~17:40
- 場所:総理大臣官邸大会議室
- 首相挨拶
- 調査・研究事項の報告
- 討議
- 第12回:12月6日(火)16:30~18:00
- 場所:総理大臣官邸大会議室
- 討議
- 第13回:12月22日(水)16:15~17:45
- 場所:総理大臣官邸大会議室
- 有識者会議報告について
- 首相挨拶
報告書の主な内容[編集]
【皇族数確保の具体的方策】として
- ① 内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること
- 皇室の歴史に整合的であり、公的活動の継続性等の観点からも望ましい。
- 皇位継承資格を女系に拡大することにつながるとの考え方もあるが、子は皇位継承資格を持たないとすることが考えられる。配偶者と子は皇族という特別の身分を有せず、一般国民としての権利・義務を保持し続けるものとすることが考えられる。
- 現在の内観王・女王殿下方は、現行制度下で人生を過ごされてきたことに十分留意する必要がある。
- ② 皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇に属する男系の男子を皇族とすること
- 現行制度では婚姻と出生以外に皇族数が増加することがない中で、養子を迎えることを可能とすることは男子出生のプレッシャーの緩和にもつながるのではないか。
- いわゆる旧11宮家の皇族男子は、現行憲法・皇室典範施行後5か月の間 皇位継承資格を有していた方々であり、その男系男子の子孫の方々に養子となっていただくことも考えられる。
- 養子となって皇族となられた方は、皇位継承資格を持たないこととすることが考えられる。
- ③ 皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とすること
- 皇族という特別な立場について、一般国民における家族制度とは異なるアプローチをとるものであり、現皇族の御意思は必要としないという面もある。
- 現在いらっしゃる皇族方と何ら家族関係を有しないまま皇族となることは、②の方策に比べより困難な面があるのではないかとの指摘もある。①・②の方策では十分な皇族数を確保することができない場合に検討すべき。
【その他】として
• 婚姻により皇族の身分を離れた元女性皇族に皇室の活動を支援していただくことも考えられるが、皇族数の確保のためには①から③のような方策が必要。
としており、安定的な皇位継承という観点からは①は事実上効果がなく、②・③が事実上の主案となっている
過去の有識者会議との相違[編集]
皇室制度に関係する有識者会議は過去に小泉政権下で「皇室典範に関する有識者会議」が、野田政権下で「皇室制度に関する有識者ヒアリング」が、安倍政権下で「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」がそれぞれ行われている。
- 皇室典範に関する有識者会議
- 皇室制度に関する有識者ヒアリング
- 天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議
- 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議
政府・与野党の動き[編集]
岸田首相は有識者会議のまとめた報告書を衆参両院の議長へと手渡し、両院に報告した。その際に首相は「政府としましてはこれ(報告書)を尊重する」と明言した。
- 立憲民主党
- 日本維新の会
- 国民民主党
- 玉木雄一郎代表:「皇位継承の基本は男系男子。ただ、非常に細い糸になっており、伝統や憲法との整合性をとりながら解決策を見つけていくことが必要」とし、さらなる検討を議論を求めた。
- 日本共産党