シャンシャン (ジャイアントパンダ)

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シャンシャン
別名・愛称漢字表記:香香 英語表記:XiangXiang
生物ジャイアントパンダ
性別メス
生誕2017年6月12日
日本の旗 日本 〒110-8711 東京都台東区上野公園9-83  恩賜上野動物園
国籍中華人民共和国
体重99.5kg

シャンシャン(漢字表記:香香、英語表記:XiangXiang 2017年6月12日[1] - )は、東京都恩賜上野動物園で自然交配により誕生した雌(メス)のジャイアントパンダ[2]父はリーリー英語版、母はシンシン英語版[3]2021年6月23日に誕生した同動物園初の双子ジャイアントパンダ・シャオシャオ(暁暁・オス)とレイレイ(蕾蕾・メス)はシャンシャンの弟妹である。

略歴[編集]

誕生から中国返還まで[編集]

2017年6月12日11時52分、東京都・恩賜上野動物園で生まれる[4]

1988年6月23日同動物園で生まれたオスのジャイアントパンダ・ユウユウ(漢字表記:悠悠 英語表記:YouYou)以来実に29年ぶりに無事に成長した同動物園の歴代ジャイアントパンダであり、2度目の自然交配による誕生だった(初の自然交配によって誕生したジャイアントパンダは2012年7月5生まれのオス)[5]

出生時の体長は14.3センチ、体重は147グラム[6]。2017年6月22日3回目の身体検査によりメスと判明。同年7月25日に名前を募集開始、2か月後の9月25日に応募総数322,581件の中から名前が「シャンシャン」(香香)に決定。名前の意味は呼びやすく、漢字の「香」は花開く明るいイメージから[7]。生後約半年後の12月19日には、母親のシンシンとともに公開された[8]。当時母子の公開は抽選制で、シャンシャンが生まれた2017年内だけで25万件もの応募があり、公開後初の週末となる12月23日の倍率は144倍であった[9]

その後もシャンシャンは日本国内で爆発的な人気を誇り、アイドル的存在となった[10]。ファンは国内各地から来園し、常に長蛇の列が並んだ。シャンシャンの誕生日ともなると毎年約4時間以上待ちの列ができた。その模様は各メディアに取り上げられるほどであった。

5度の中国返還延長を経て、2022年12月23日シャンシャンの返還日が2023年2月中~3月上旬と発表、その後2023年2月21日に正式決定[11]。観覧最終日となった2023年2月19日には大勢のファンが同園を訪れ、最大2600人の事前抽選制で最後の時間枠は倍率70倍[12]にもなった。シャンシャンが上野動物園にいた5年間の経済効果は日本円で600億円以上と言われており、返還後も増え続けると予想されている[13]

中華人民共和国への返還、その後[編集]

東京都が中国より借り入れている状態のリーリーとシンシンの間に生まれたシャンシャンの所有権は、協定に基づいて中国側に認められている[14]。シャンシャンは、その生後満24か月で中国に返還する予定であったが、日本での人気の高さを背景とした日中間の交渉とその後の新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響で、合計5回も返還延期された[15][14]

2023年2月21日、順豊航空のチャーター貨物機で日本を出発[16]。同日夕方には四川省成都双流国際空港に到着した[17][18]。シャンシャンの日本出発は早朝に行われたが、上野動物園や成田空港には多数のファンやメディアが駆け付け、別れを惜しんだ[19]。中国到着後、シャンシャンは雅安ジャイアントパンダ研究センター碧峰峡(ヘきほうきょう)基地に移された[20]

中国外務省の報道官汪文斌は、シャンシャンについて「(日中の)友好交流を促進してくれたかわいい使者だ」と述べた[14]

2023年2月21日中国へ返還後の様子が中国ジャイアントパンダ保護研究センターのウェイボー(中国SNS)アカウントに写真と共に掲載され[21]、同年4月にはiPandaパンダ楽園Youtubeチャンネルに現地飼育員が撮影したと思われる、シャンシャンが元気にたけのこを食べる最新動画が上がった[22]

中国デビュー[編集]

2023年10月8日雅安ジャイアントパンダ研究センター碧峰峡基地(中国語:Bìfēngxiá jīdì)にて約8ヶ月のリハビリ(中国語や中国式の給餌方法など新しい環境に慣れる)期間を経て一般公開された。シャンシャンの繊細な性格を考慮し、観覧者との間はガラス板で隔てており、シャンシャンが生活していた上野動物園・東園と似た環境の中、オープニングセレモニー等大々的な事は行わず、静かにひっそりと一般公開を開始した[23]。しかし少人数ながらも中国のパンダファンや現地中国メディアは元より、日本からもシャンシャンファンが駆けつけ、動画サイトにて生中継された。

中国のメディアがインタビューしたシャンシャン担当飼育員によると、「非常にグルメであり、餌となる竹や笹にうるさく、現時点で一番好きな食べ物はりんご、2位はタケノコ、3位はパンダケーキ[注釈 1] [24] で、特にタケノコについては食いしん坊で目の前にあるだけ食べる程の好物であり、2・3本咥えてお気に入りの場所まで運び、そこで食べるのが好きだ」という。

ジャイアントパンダの主食であるは、なぜか夜にしか食べない。夜寝る場所は上野動物園のような櫓の上ではなく、洞窟の様なところである。空腹になると竹や笹を洞窟に持ち込み食べる[25]

日中は給餌の時間になると下山し姿を見せるが、それ以外の時間は、敷地内の山で散歩したり昼寝をする為、姿を見せない。

性格・特徴[編集]

  • お転婆で物怖じせず、少し頑固で好奇心旺盛。 高い所が好きで、大体櫓の上や木の上にいる[26]。だが環境が変わると食欲がなくなる等繊細な一面もある。
  • 物怖じしない性格は母・シンシンから、繊細な部分・木登り好きや木の上が好きな性格は父・リーリーから受け継いでいると思われる[要出典]
  • 2017年11月に中国にて催されたパンダの繁殖技術に関する国際会議の場では、「顔立ちの整った美人さんだね」と褒められている[27]
  • 嫌いな食べ物はニンジン。飼育員がみじん切りにしたり工夫をするが、基本的に食べない(気分によるものなのか、すりおろされたニンジンは稀に食べる事がある)。食べたくない時はニンジンを脚でまたいだり踏みつけたり、お尻で下敷きにしペースト状にし自分の視界から消す。2022年冬には飼育員から半分にカットされたニンジンの塊を柵越しに渡されるという『ショック療法』を受けた際パニック状態になり飼育員に苦情を訴え、放り捨てた[要出典]。2023年2月21日中国へ返還後、飼育員のトレーニングによって大嫌いなニンジンも採食するようになったと伝えられた[28]が、中国一般公開後現地メディアが担当飼育員へ尋ねたところ、ニンジンは給餌していないと答えた。このことからシャンシャンのニンジン嫌いは今も健在なことが判明した。
  • 幼い頃の特技は、切断された木の上で垂れた状態で眠る事、屋内放飼場にある寝台をくぐること、屋外放飼場の水飲み場のゴム栓を抜く事。寝台をくぐる事は成獣(大人)になった今も健在[要出典]
  • おやつが入っている給餌玩具の竹筒を振る際首も一緒に振ってしまう癖がある[要出典]
  • 東京ズーネットYouTubeチャンネルで「多くの人を魅了する気分屋さん、カリスマパンダ『シャンシャン』」と紹介され
  • 上記の通り、穏やかに過ごしていると思うや否や、急に走り出したり、餌に八つ当たりしたり、物を破壊したりする『気分屋』の一面がある[要出典]
  • 2023年1月31日に発情期を迎えた[29]
  • 中国での一般公開初日、日本語の発音で「シャンシャン」という呼びかけに反応をし、日本語と中国語のバイリンガルである事を証明した[30]
  • 中国では「香香公主(シャンシャン姫)」「小香(シャンちゃん)」と呼ばれている[要出典]
  • 上野動物園時代より採食中短時間動きが止まってしまう事がある。これは父・リーリーの癖が遺伝したものと思われる[要出典]

その他[編集]

  • 命名後の2017年10月、北海道室蘭市中島町内のミニ独立国「シャンシャン共和国」がシャンシャンを名誉国民に認定し、上野動物園に称号記を贈った他共和国の商店街内にも命名記念のチラシを掲示した[31]
  • 一歳の誕生日に贈られたハンモックは飼育員が消防ホースを編んで作られた物[32]。シャンシャンのハンモックという事から『シャンモック』と言われている。
  • シャンシャンを通じて知り合いになった人を「シャン友(シャンシャン+友達)」[33]、シャンシャンを含めジャイアントパンダを通じて知り合いになった人を「パン友(パンダ+友達)」という[34]
  • 2020年7月20日、大韓民国京畿道竜仁にあるエバーランドで韓国初の自然交配で生まれたジャイアントパンダ「福宝(Fubao)[35]」が誕生時保育器の中で一緒にいた赤ちゃんパンダのぬいぐるみ[36] はシャンシャンをモデルにした上野動物園で販売されていた物。福宝が生まれる前にエバーランドのパンダ担当飼育員が自然交配に向けて上野動物園へ研修に行った際、上野動物園スタッフからプレゼントされたものだった事を明らかにしている[37][38]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ トウモロコシ粉、大豆粉、粉、などが材料の特製ケーキ。上野時代はパンダだんごと呼ばれていたものを振るまわれており、見た目はやや異なるが、ほぼ同じ材料である。

出典[編集]

  1. ^ “Giant panda Xiang Xiang turns 3 at Tokyo zoo”. Xinhua News Agency. (2020年6月12日). オリジナルの2020年6月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200612210421/http://www.xinhuanet.com/english/2020-06/12/c_139134538.htm 
  2. ^ “Giant panda cub Xiang Xiang turns 1 year old at Tokyo zoo”. The Japan Times. (2018年6月12日). https://www.japantimes.co.jp/news/2018/06/12/national/giant-panda-cub-xiang-xiang-turns-1-year-old-tokyo-zoo/ 
  3. ^ Julian Ryall (2020年12月11日). “Panda diplomacy: tears of joy as China extends Xiang Xiang’s stay in Japan”. South China Morning Post. https://www.scmp.com/week-asia/people/article/3113549/panda-diplomacy-tears-joy-china-extends-xiang-xiangs-stay-japan 
  4. ^ パンダプロフィール”. シャンシャン(香香). 東京動物園協会. 2023年2月24日閲覧。
  5. ^ 歴代のパンダたち|上野動物園のジャイアントパンダ情報サイト「UENO-PANDA.JP」”. www.ueno-panda.jp. 2023年5月1日閲覧。
  6. ^ ジャイアントパンダ「シンシン」出産その後[1](6/13、6/14)」『上野動物園のジャイアントパンダ情報サイトUENOーPANDA.JP』、2017年6月14日。2017年6月14日閲覧。オリジナルの2017年6月14日時点におけるアーカイブ。
  7. ^ パンダプロフィール|上野動物園のジャイアントパンダ情報サイト「UENO-PANDA.JP」”. www.ueno-panda.jp. 2023年4月30日閲覧。
  8. ^ 子どもの成長”. 東京動物園協会. 2023年2月24日閲覧。
  9. ^ シャンシャンがついに公開!抽選倍率144倍の日も!? | J-WAVE NEWS”. J-WAVE NEWS | 音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」 | J-WAVE 81.3 FM. 2023年4月30日閲覧。
  10. ^ 〈シャンシャン ついに返還〉引っ越しで激ヤセ…シャンシャンを中国に返して大丈夫?」『文春オンライン』、2023年2月21日。2023年2月24日閲覧。
  11. ^ ジャイアントパンダ「シャンシャン」の返還日が決まりました”. 東京ズーネット TOKYO ZOO NET. 2023年4月30日閲覧。
  12. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2023年2月19日). “シャンシャンお別れ 上野で最終観覧、倍率70倍”. 産経ニュース. 2023年4月30日閲覧。
  13. ^ シャンシャン中国へ返還 経済効果は600億円でWBC超え【WBS】(テレ東BIZ)”. Yahoo!ニュース. 2023年4月30日閲覧。
  14. ^ a b c 上野動物園 パンダ「シャンシャン」返還先の中国に到着」『NHK』、2023年2月21日。2023年2月24日閲覧。オリジナルの2023年2月22日時点におけるアーカイブ。
  15. ^ 上野動物園のパンダ「シャンシャン」が21日に中国返還へ」『人民網日本語版』、2023年2月17日。2023年2月24日閲覧。オリジナルの2023年2月20日時点におけるアーカイブ。
  16. ^ シャンシャン、旅立ちの朝 上野動物園」『朝日新聞デジタル』、2023年2月21日。2023年2月24日閲覧。オリジナルの2023年2月22日時点におけるアーカイブ。
  17. ^ シャンシャンは香香に 中国に到着した「大熊猫」、現地でも高い関心」『朝日新聞デジタル』、2023年2月22日。オリジナルの2023年2月23日時点におけるアーカイブ。
  18. ^ ジャイアントパンダ シャンシャン四川到着 機内でソワソワ」『毎日新聞』、2023年2月22日。2023年2月24日閲覧。オリジナルの2023年2月22日時点におけるアーカイブ。
  19. ^ 上野『シャンシャン』返還 変わりゆく“パンダ外交”のしかかる巨額の維持費問題」『テレ朝 news』、2023年2月21日。2023年2月24日閲覧。オリジナルの2023年2月21日時点におけるアーカイブ。
  20. ^ 中国に返還のパンダ「シャンシャン」の一般公開は1ヶ月後から」『人民網日本語版』、2023年2月22日。2023年2月24日閲覧。オリジナルの2023年2月22日時点におけるアーカイブ。
  21. ^ 微博”. m.weibo.cn. 2023年5月1日閲覧。
  22. ^ iPanda パンダ楽園 - YouTube”. www.youtube.com. 2023年5月1日閲覧。
  23. ^ https://twitter.com/kouhoubuchn/status/1711017543278961003”. X (formerly Twitter). 2023年11月4日閲覧。
  24. ^ シャンシャンが半年「非公開エリア」で暮らす事情”. 中川美帆・東洋経済新報社 (2023年8月15日). 2024年3月7日閲覧。
  25. ^ (日本語) 【ランランさんよりシャンシャンデビューの振り返り(第一編)】終りよければ全て良し、ランランさんと密着交流 いろんな困難を乗り越え、堂々とデビュー迄頑張ってきたシャンちゃんの歩みを振り返り!, https://www.youtube.com/watch?v=KaA0iRu7rOY 2023年11月4日閲覧。 
  26. ^ 毎日パンダ | 上野動物園に毎日通い続ける人によるパンダブログ”. mainichi-panda.jp. 2023年4月30日閲覧。
  27. ^ 西村ゆか、西本奈緒美 (2017年12月12日). “シャンシャンは「美人さん」 生後半年、19日に公開”. 朝日新聞. https://www.asahi.com/sp/articles/ASKDD3C6RKDDUTIL00C.html 2024年2月1日閲覧。 
  28. ^ シャンシャンが半年「非公開エリア」で暮らす事情”. 東洋経済オンライン (2023年8月15日). 2023年11月4日閲覧。
  29. ^ ジャイアントパンダの近況[97]、「シンシン」とその子どもの近況[61]”. 東京ズーネット TOKYO ZOO NET. 2023年4月30日閲覧。
  30. ^ https://twitter.com/achan_5522/status/1711982393199079670”. X (formerly Twitter). 2023年11月4日閲覧。
  31. ^ パンダの香香「名誉国民」室蘭・シャンシャン共和国 称号記とチラシを作製 - 室蘭民報2017年10月25日
  32. ^ シャンシャン12日に1歳 ハンモックがお気に入り - 西日本新聞
  33. ^ 上野動物園のパンダ「シャンシャン」 返還なぜ?中国の施設は? - NHK首都圏ナビ
  34. ^ 上野動物園で双子のパンダ公開! “パン友”感激「フワフワでかわいかった」 - 東スポWEB
  35. ^ [최초공개 아기 판다 탄생 순간! 진통을 견뎌내고 엄마가 된 아이바오 | 에버랜드 판다 출산 현장]” (朝鮮語). withEverland (2020年7月22日). 2023年11月4日閲覧。
  36. ^ (日本語) [판다로그 부지런히 크고 있는 30일차 아기판다의 하루 | 에버랜드 판다월드 (Baby Panda)], https://www.youtube.com/watch?v=_6Xxsw5ygoo 2023年11月4日閲覧。 
  37. ^ (日本語) [판다로그 판다 할아버지표 아기판다 Q&A 1편 | 에버랜드 판다월드 (Baby Panda)], https://www.youtube.com/watch?v=d6bYkupXGuo 2023年11月4日閲覧。 
  38. ^ (日本語) [판다로그 판다 할아버지가 알려주는 아기판다 Q&A 2편 | 에버랜드 판다월드 (Baby Panda)], https://www.youtube.com/watch?v=T40LyshiCDQ 2023年11月4日閲覧。 

外部リンク[編集]

  • 上野動物園のジャイアントパンダ情報サイト「UENO-PANDA.JP」[1]
  • @中国大熊猫保护研究中心 的个人主页 - 微博 (weibo.com)[2]
  • iPanda パンダ楽園 [3]
  • pandapia熊猫乌托邦-哔哩哔哩_Bilibili[4]
  • 中国大熊猫保护研究中心雅安碧峰峡基地 (ipanda.com)[5]