中華人民共和国
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- 中華人民共和国
- 中华人民共和国
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(国旗) (国章) - 国の標語:为人民服务
人民に奉仕する - 国歌:义勇军进行曲
義勇軍進行曲 -
公用語 中国語(普通話) 首都 北京市 最大の都市 上海市(市区人口による)
重慶市(行政人口による)[注釈 1]- 政府
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中国共産党総書記、党軍事委員会主席[注釈 2] 習近平 国家主席[注釈 3] 習近平 国務院総理[注釈 4] 李強 全人代常務委員長[注釈 5] 趙楽際 全国政協主席[注釈 6] 王滬寧 書記処常務書記 蔡奇 国務院常務副総理[注釈 7] 丁薛祥 国家副主席[注釈 8] 韓正[注釈 9] 最高人民法院院長[注釈 10] 張軍 最高人民検察院検察長 [注釈 11] 応勇 - 面積
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総計 9,634,060 – 9,672,018km2(3/4位) 水面積率 2.8% - 人口
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総計(2024年) 14億828万人[1][2]人(2位) 人口密度 153.3[2][3]人/km2 - GDP(自国通貨表示)
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合計(2020年) 102兆5916億6000万[4]人民元 - GDP(MER)
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合計(2025年) 19兆5348億9400万[4]ドル(2位) 1人あたり 1万511.335[4]ドル - GDP(PPP)
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合計(2020年) 24兆1913億100万[4]ドル(1位) 1人あたり 1万7104.144[4]ドル - 建国
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中華人民共和国成立 1949年10月1日
通貨 人民元(CNY) 時間帯 UTC+8 (DST:なし) ISO 3166-1 CN / CHN ccTLD .cn 国際電話番号 86 -
- ^ 中国における「行政区分としての市」(直轄市、または地級市)と「市区」の違いについては、中華人民共和国の都市を参照のこと。
- ^ 中華人民共和国では支配政党中国共産党が国家を指導してゆくことが謳われているため、同国では同党の中国共産党総書記と党軍事委員会主席を兼任する者が事実上の党と国家の最高指導者となっている。また、党総書記と党軍事委員会主席は常に最高指導者を輩出している重職である。
- ^ 中華人民共和国の事実上の元首で、儀礼的な存在。
- ^ 中国政府の長で、首相的な存在。
- ^ 他国における国会議長に相当する職である。
- ^ 他国における統一戦線議長に相当する職である。
- ^ 他国における副首相に相当する職である。
- ^ 他国における副大統領に相当する職である。
- ^ 共産党における韓正国家副主席の序列は李希中央紀委書記に次ぐ第8位。詳細は中華人民共和国#政治を参照
- ^ 他国における最高裁判所長官に相当する職である。
- ^ 他国における検事総長に相当する職である。
註2: 面積順位第4位とされる中華人民共和国と、第3位とされるがアメリカ合衆国の面積は非常に近く、それぞれの国土の定義によっては、順位が入れ替わることがある。
註3:中華民国(台湾)と中華人民共和国は本来互いに隷属していない。
中華人民共和国 | |||||||||||||||||||||||
中国語 | |||||||||||||||||||||||
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繁体字 | 中華人民共和國 | ||||||||||||||||||||||
簡体字 | 中华人民共和国 | ||||||||||||||||||||||
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チベット語 | |||||||||||||||||||||||
チベット文字 | ཀྲུང་ཧྭ་མི་དམངས་སྤྱི་མཐུན་རྒྱལ་ཁབ། | ||||||||||||||||||||||
モンゴル語 | |||||||||||||||||||||||
モンゴル文字 | ᠪᠦᠭᠦᠳᠡ ᠨᠠᠶᠢᠷᠠᠮᠳᠠᠬᠤ ᠬᠢᠲᠠᠳ ᠠᠷᠠᠳ ᠤᠯᠤᠰ | ||||||||||||||||||||||
ウイグル語 | |||||||||||||||||||||||
ウイグル語 | جۇڭخۇا خەلق جۇمھۇرىيىتى | ||||||||||||||||||||||
チワン語 | |||||||||||||||||||||||
チワン語 | Cunghvaz Yinzminz Gunghozgoz | ||||||||||||||||||||||
日本語 | |||||||||||||||||||||||
日本語 | 中華人民共和国 日本語読み: ちゅうかじんみんきょうわこく 原音読み: チョンファ ルェンミン ゴンホェークォ |
共産主義 |
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社会主義 |
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中華人民共和国(ちゅうかじんみんきょうわこく、簡体字: 中华人民共和国; 繁体字: 中華人民共和國; 拼音: Zhōnghuá Rénmín Gònghéguó 聞く)、通称中国(ちゅうごく、拼音: Zhōngguó)は、東アジアに位置する社会主義共和制国家。首都は北京市。
概要
[編集]成立
[編集]中華ソビエト共和国としてはじまった中華人民共和国は、中華民国統治下の中国で1921年7月に結党された中国共産党がソビエト連邦の支援を受けながら、国共合作・日中戦争[注釈 1]・国共内戦を経て中華民国政府を台湾へ放逐[注釈 2] し、1949年10月1日に毛沢東中国共産党主席が北京市天安門広場で建国宣言を行ったことで成立した。
体制
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国 | 民主主義指数 |
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日本 | 8.33 |
インド | 7.04 |
インドネシア | 6.71 |
世界平均 | 5.29 |
中華人民共和国 | 1.94 |
国 | 世界報道自由度 |
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日本 | 63.95 |
インドネシア | 54.83 |
インド | 36.62 |
中華人民共和国 | 22.97 |
1949年10月の建国以来中国共産党による一党独裁体制[注釈 3] が続いている。エコノミスト誌傘下の研究所エコノミスト・インテリジェンス・ユニットによる民主主義指数は世界153位という下位であり独裁政治体制に分類されている(2019年度)[5]。また、国境なき記者団による世界報道自由度ランキングは下から4番目の177位に位置付けられており、最も深刻な状況にある国の1つに分類されている(2020年度)[6][7]。
中華人民共和国の人権状況についてヒューマン・ライツ・ウォッチは「中国は依然として一党独裁国家であり、基本的人権を体系的に抑圧している」「人権擁護の弁護士や活動家が恣意的に拘留され、起訴されている」「非政府組織、活動家、メディア、そしてインターネットに対する統制は強化されている」と報告している[8]。2010年の劉暁波のノーベル平和賞受賞問題[9]、2016年に政府が香港などで批判者を拉致して強制的に失踪させた事件[8]、2020年の新型コロナ問題での人民の言論監視[10] などに見られたように近年は言論統制や弾圧が一段と強化されている傾向がある[9]。チベット問題やウイグル問題など少数民族に対する人権侵害問題も深刻で国際社会から憂慮されている[8][11][12][13][14]。特にアメリカ合衆国政府、カナダの下院、オランダの議会、イギリスの下院、フランスの下院、リトアニア共和国議会などは、ウイグル人強制収容所などについてジェノサイド(大量虐殺)政策と認定している[15][16][17][18][19][20]。2019年以降は一国二制度下の香港への統制を強めている[21]。南沙諸島や中華民国への軍備増強や威嚇行為が年々激しさを増している。
経済
[編集]清、中華民国の時代では、分裂や暴動、他国との戦争での敗戦が続き、諸外国による間接的な支配が長年続いた。1978年以前までの中華人民共和国においても内乱と紛争、混乱が続いていため、経済や軍事が長期間低迷し、貧困が200年以上続いていた。
1978年12月における改革開放の導入以来、「社会主義市場経済」と称して「経済特区」や「沿岸開放都市」などの設置を行い、社会主義経済体制からの根本的な転換を行った。その結果外資流入の勢いが増し、20年以上に渡って年平均9%以上の実質GDP成長率を達成し、2010年にはGDP規模で日本を追い抜いてアメリカ合衆国に次ぐ世界第2位の経済力を有する国となった。中国共産党総書記習近平は2012年に「中華民族の偉大なる復興」を発表した。
発展途上国に有利に出る購買力平価では世界第1位であり、世界最大の輸出国と製造国、第2位の輸入国である[22][23][24]。同国は経済・軍事・技術・外交・ソフト・パワーの影響力において、世界の新興超大国とみなされている[25][26][27][28][29][30]。
しかし、経済発展に伴い経済格差の拡大・環境問題など各種の社会問題も深刻化している[9]。エネルギー使用による二酸化炭素(CO2)排出量は世界最大[31]、条約で規制されているフロンも中華人民共和国では未だ大量放出されている[32]。大気汚染は深刻で特に首都北京は風次第でしばしばスモッグに覆われる[33]。長江をはじめとする河川の水質汚染も深刻な状況にある(中国の水危機)[34]。
中華人民共和国の環境問題については中国の環境問題を参照。
外交
[編集]
建国以来ソビエト連邦に並ぶ東側の大国として影響力を持ったが、ソ連でスターリン批判が起きるとスターリン主義の立場からソ連と仲違いし、中ソ対立が武力衝突にまで及ぶに至って1970年代以降はアメリカ合衆国や日本など西側諸国に接近し、日米と国交して中華民国と断交させた[35]。1971年10月に国連総会で中国代表権を認められて、国際連合に加盟し、追放された中華民国の後任として国際連合安全保障理事会常任理事国となった。1989年6月に六四天安門事件を起こして国際社会から強い非難を受けたが、1991年12月のソ連崩壊後も共産党独裁体制維持に成功し、「全方位外交」と称して1992年には米中・日中国交後も中華民国との関係を維持していたイスラエルや韓国に接近して国交を樹立し、中華民国と断交させた[35]。その後も中華民国と国交を結ぶ国に対して様々な圧力をかけることで中華人民共和国との国交、中華民国との断交を促し、中華民国を孤立化させる外交を推進している[36][37][38]。
現在の中華人民共和国は多数の公式及び非公式の多国間機構に加盟しており、WTO、APEC、BRICS、上海協力機構、BCIM、G20がこれに該当する。中華人民共和国はアジアの地域大国であり、多数の解説者により潜在的な超大国として特徴付けられてきた[39][40]。しかし習近平体制になってから「戦狼外交」と呼ばれる好戦的で強硬な外交姿勢を強めており、国際社会との摩擦が目立ってきている[41][42]。また香港問題やウイグル問題などの人権問題をめぐる国際的批判が強まっている。
軍事
[編集]1964年10月に最初の核実験を実施しており、核拡散防止条約により核兵器の保有を認められた5つの公式核保有国の1つとなった[9]。21世紀以降は急速な軍拡が行われ、アジアでは最大の、世界ではアメリカ合衆国に次ぐ軍事支出を行う軍事大国となっている[43]。その軍隊である中国人民解放軍の兵力は200万人を超えると見られており[44]、世界最大人数の常備軍である。
民族と宗教
[編集]人口は世界第2位の約14億人であり、うち92%以上を漢族が占める。他にモンゴル族、チベット族、ウイグル族、朝鮮族、満洲族、回族、チワン族、ミャオ族、ヤオ族など55の少数民族が存在する[9][45]。言語は漢語が大部分を占め、北京語を元にした中国語の普通話が共通語であるが[9]、各地域では数多くの方言と少数民族の言語が併用されている[46]。
宗教はイスラム教やキリスト教、チベット仏教などが少数存在している。
地理
[編集]公式には23の省[注釈 4]、5つの自治区、4つの直轄市と2つの特別行政区から構成され、総面積は約960万平方キロメートルで世界第3位、ロシア連邦と並び世界で最も隣国が多い国(14か国)である[47]。
計測方法によるが外務省によれば陸地面積では世界第4位とされ[48]、総面積では世界第3位又は4位である(詳細は国の面積順リストに参照のこと)。同国の地形は、乾燥した北の森林ステップ、ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠から、多湿な南の亜熱帯の森林まで広大かつ多様である。ヒマラヤ山脈、カラコルム山脈、パミール高原、天山山脈により、同国は南及び中央アジアから切り離されている。長さ世界第3位の長江及び同世界第6位の黄河は、チベット高原から人口密度の高い東の沿岸地域に流れ、古代には黄河文明や長江文明を興してきた。同国の太平洋に沿った海岸線は1万4500キロメートルの長さで、渤海、黄海、東シナ海、南シナ海に囲まれている。同国の国土は、22省級行政区、5自治区、北京市・天津市・上海市・重慶市の4直轄市、大部分が自治的な香港・マカオの2特別行政区によって構成されている。なお2017年7月現在、中華人民共和国の世界遺産はイタリアについで56件ある。国内には文化遺産が38件、自然遺産が14件、複合遺産が4件存在する。
国名
[編集]現在の公式国名は中華人民共和国 (簡体字中国語: 中华人民共和国; 拼音: ) 発音 である。一般には中国 (簡体字中国語: 中国; 拼音: ) 、あるいは中華 (簡体字中国語: 中华; 拼音: ) と呼称される。
「中国」という言葉は、紀元前6世紀の書経・詩経で既に記述されており、中華帝国以前の時代には華夏族を四夷と区別するため、文化的概念として頻繁に用いられた。その後、中華帝国の変遷と共に様々な古文書で用いられる「中国」の意味も変化して行ったが、近代的な主権国家全体の名称として用いられるようになったは19世紀半ばからである(詳細は「中国」の項目参照のこと)。
中国と同義で用いられる支那は、帝国主義のイメージと結びついて中華人民共和国では侮蔑的な呼称と認識されているが、その原型が古くから印欧語族の諸国で用いられてきたために派生形が多く残っている。たとえば英名の"China"は、サンスクリット語のCīna (चीन) を由来とするペルシア語のChīn (چین)が由来と考えられる[49]。"China"という言葉は、ポルトガルの探検家Duarte Barbosaの日誌において1516年に初めて記録された[50]。1555年、同日誌はイングランドにおいて翻訳及び出版された[51]。17世紀にマルティノ・マルティニにより提唱された伝統的理論では、Cīnaは周において中国最西の国である"Qin" (秦) が由来である[52]。また、Cīnaはマハーバーラタ (紀元前5世紀) 及びマヌ法典 (紀元前2世紀) を含む初期のヒンドゥー教の聖典において用いられていた[53][54]。
「中国」の国名を巡っては、中華人民共和国の前に中国大陸を統治した中華民国との間で軋轢がある。1971年10月のアルバニア決議以降、中華人民共和国が「中国」の議席および関連する地位を獲得し、「中国」は徐々に国際社会において中華人民共和国を指すようになった[55] 。この他、「日中関係」「駐華大使」のように「中」も「華」も中華人民共和国の略称として用いられている現状がある。台湾海峡を挟んで「二つの中国」が分断する現況から、中華人民共和国は中華民国(台湾地区)に対応する場合は「中国大陸」[注釈 5] と呼ばれることがある。中華人民共和国政府は中華民国(台湾)からは「大陸当局」「北京当局」、「北京」または「中共」[注釈 6] とも呼ばれる。中華民国憲法では「大陸地区」とされる。
英語圏では"People's Republic of China"(中華人民共和国)を略して"PRC"と表記することがある[56]。
歴史
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先史時代 中石器時代 新石器時代 | |||||||||||
三皇五帝 (古国時代) | (黄河文明・ 長江文明・ 遼河文明) | ||||||||||
夏 | |||||||||||
殷 | |||||||||||
周(西周) | |||||||||||
周 (東周) | 春秋時代 | ||||||||||
戦国時代 | |||||||||||
秦 | |||||||||||
漢(前漢) | |||||||||||
新 | |||||||||||
漢(後漢) | |||||||||||
呉 (孫呉) | 漢 (蜀漢) | 魏 (曹魏) | |||||||||
晋(西晋) | |||||||||||
晋(東晋) | 十六国 | ||||||||||
宋(劉宋) | 魏(北魏) | ||||||||||
斉(南斉) | |||||||||||
梁 | 魏 (西魏) | 魏 (東魏) | |||||||||
陳 | 梁 (後梁) | 周 (北周) | 斉 (北斉) | ||||||||
隋 | |||||||||||
唐 | |||||||||||
周(武周) | |||||||||||
五代十国 | 契丹 | ||||||||||
宋 (北宋) | 夏 (西夏) | 遼 | |||||||||
宋 (南宋) | 金 | ||||||||||
元 | |||||||||||
明 | 元 (北元) | ||||||||||
明 (南明) | 順 | 後金 | |||||||||
清 | |||||||||||
中華民国 | 満洲国 | ||||||||||
中華 民国 (台湾) | 中華人民共和国
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中華人民共和国が樹立された時点で、蔣介石率いる中華民国政府は未だ中国大陸の華南三省と西南部三省の多数の地域を統治していた。だが、中国人民解放軍の攻勢によって1949年12月に中国国民党は接収していた台湾に逃れ、人民解放軍は翌1950年5月までに福建省・浙江省[注釈 7] の一部島嶼を除く中国大陸と海南島を制圧した。ただし、台湾に政府機能を移転した中華民国政府は存続し、台湾とその他島嶼からなる地域(台湾地区)は2021年現在に至るまで中華民国政府の実効支配下にある。
毛沢東の時代
[編集]毛沢東時代の中華人民共和国は、社会の共産主義化を推進した。中華人民共和国の建国後、毛沢東は毛沢東思想に基づき、中国共産党を軸にした世界革命路線を推進した。ソビエト連邦と中華民国間で締結された中ソ友好同盟条約(1945年8月)によって、ソ連が中華民国から租借していた旅順港・大連港・南満洲鉄道について、1950年の中ソ友好同盟相互援助条約と同日締結した協定により中華人民共和国へ編入。1952年には朝鮮戦争に参戦し、韓国軍とアメリカ軍を主体とする国連軍を阻止した。1954年9月の第1期全国人民代表大会において、ソ連のスターリン憲法を範とする「中華人民共和国憲法」(略称:54年憲法)を採択し、それまでの人民民主統一戦線体制の「共同綱領」ではなく一党独裁制へ移行した。中華人民共和国は、毛沢東の指導の下で大躍進政策と核開発を行った。1959年のチベット蜂起を鎮圧し、1962年にはインドと武力衝突した(中印国境紛争)。
1949年の中華人民共和国成立後、「向ソ一辺倒」の下で中ソ両国は友好関係を保っていたが、1956年のフルシチョフ第一書記によるスターリン批判後、西側諸国との平和共存路線を図る修正主義的なソ連と自由主義世界との妥協を拒否する教条主義的な中華人民共和国との間で中ソ対立が生じ、ソ連と対立。1969年には両国の国境地帯に位置した珍宝島/ダマンスキー島を巡って中ソ国境紛争が勃発した。また、内政では大躍進政策の失敗によって失脚していた毛沢東が、1966年より経済の立て直しを巡る対立からプロレタリア文化大革命(文革)を発動し、官僚化した中国共産党を打倒しようと呼びかけた毛沢東の訴えに紅衛兵が呼応したため、「造反有理」、「革命無罪」の呼号の下、宗教関係者などの「反革命」派と目された人々の多くがつるし上げや殺害を受け、国内は内乱に等しい状態となった。内モンゴルの先住民族に対しては内モンゴル人民革命党粛清事件などの粛清を行った[57]。
外交では1971年の第26回国際連合総会にて採択されたアルバニア決議の結果、それまで国際連合常任理事国だった中華民国に代わって国連安全保障理事会常任理事国となり、中華民国は自ら国連を脱退した。また、ソ連との関係では中ソ対立が継続していたため、1972年2月21日のリチャード・ニクソン大統領訪中を契機にソビエトと対立するアメリカ合衆国との関係が緩和され、同年9月29日には日本の田中角栄首相と日中国交正常化を果たし、ソ連の影響から離れて資本主義諸国との関係を改善した。以後、西側諸国から経済支援を受け、3つの世界論により中国は主に第三世界において大きな影響力を保つことに成功した。1974年には南シナ海に侵攻し、当時の南ベトナム支配下の西沙諸島を占領した(西沙諸島の戦い)。文化大革命は1976年の毛沢東の死と共に終結した。その後、「二つのすべて」を掲げた華国鋒が毛沢東の後を継いだが、1978年12月の第11期3中全会で鄧小平が実権を掌握した。
鄧小平の時代
[編集]1978年より始まる鄧小平時代以降の中華人民共和国は、鄧小平理論に基づいて政治体制は中国共産党による一党体制を堅持しつつも、市場経済導入などの改革開放政策を取り、中華人民共和国の近代化を進めた(中国特色社会主義)。中ソ対立の文脈の中で、1979年2月には親ソ派のベトナムに侵攻した(中越戦争)。その後もベトナムとの関係は悪く、1984年には再びベトナムと中越国境紛争を戦い、1988年にベトナム支配下のジョンソン南礁を制圧した(南沙諸島海戦)。一方、アメリカなど西側諸国に接近し、1980年モスクワオリンピックの不参加と1984年ロサンゼルスオリンピックの参加というおおよそ西側に歩調を合わせる行動を行うようになる。
1980年代以来の経済の改革開放の進展により、「世界の工場」と呼ばれるほど経済が急成長した。一方、急激な経済成長とともに貧富差の拡大や環境破壊が問題となっている。また政府は、中華人民共和国の分裂を促すような動きや、共産党の一党体制を維持する上で脅威となる動きに対しては強硬な姿勢を取り続けている。
江沢民の時代
[編集]六四天安門事件から江沢民が台頭した。2003年3月ごろから中華人民共和国広東省を起点する重症急性呼吸器症候群(SARSコロナウイルス)の大流行の兆しを見せ始めたが、これはごく短期間で終息している。
胡錦濤の時代
[編集]2002年の第16回中国共産党大会で、胡錦濤が江沢民の後任として総書記に就任した[58]。胡錦濤のもと、中国は高い経済成長を維持し、イギリス、フランス、ドイツ、日本を抜いて世界第二位の経済大国となった[59]。しかし、経済成長は国の資源と環境に深刻な影響を及ぼし[60][61]、大規模な社会的混乱を引き起こした[62][63]。
習近平の時代
[編集]2012年11月15日、習近平が中国共産党中央委員会総書記、中央軍事委員会主席に選ばれた。

2019年末より、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が武漢市で確認され、その後新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が全世界で流行する事になった。世界的なパンデミックにより未曽有の事態に突入し、特にアメリカのトランプ政権は中国の対応を強く批判し[64]、これに伴い米中関係は大きく悪化。世界は新冷戦と呼ばれる時代に突入した。
コロナ禍の2022年2月、北京冬季オリンピックを開催した。
中国共産党政府はゼロコロナ政策により感染の防止に務めたが、2022年には再び国内でコロナウイルスが蔓延した。そのため上海などの経済都市に対して政府はロックダウンの措置をとった[65]。また、ほぼ同時期に香港民主化運動を強権的に封殺するも、これは却って世界各国における対中感情の悪化を招いた。一方、厳格なゼロコロナ政策により政府当局への国民の不満が高まり、同年11月には白紙革命が勃発。共産党政府への批判がタブーな中国では異例の政府批判が起きる事態となった。政府はこれを受けてゼロコロナ政策の転換を余儀なくされた。
2022年の第二十次中央委員会第一次全体会議で、習近平が中国共産党中央委員会総書記に3期連続で選出された。[66]。
2022年ロシアのウクライナ侵攻以降は中国は、表面上は対アメリカという観点からロシア寄りの立場を取っているが[67]、他方ではプーチンが失脚した場合の「シナリオ」を模索しての行動を行っているという見方もある[68]。
中華人民共和国は、2023年8月、日本産の水産物の輸入を禁じた[69]。なお2021年、中華人民共和国の陽江原子力発電所は福島第一原子力発電所の5倍以上のトリチウムを放出した[70]。
中華人民共和国の呉江浩駐日大使は、2024年5月、「日本が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」などと発言した[71]。
政治
[編集]中華人民共和国は憲法前文で、孫文が指揮する辛亥革命と中華民国創立の意義は認めつつ、中華民国が帝国主義と封建主義に反対する任務を達成できなかった為に、中国の諸民族人民を率いる中国共産党が新民主主義革命によって官僚資本主義の支配(蔣介石政権)を覆し、同国を建国したとしている。そのため同国は、中国旧来の政治的実体である中華民国が1955年(大陳島撤退)以降も引き続き残存している台湾[注釈 8](台湾島、澎湖諸島、金門島、馬祖島及びその他島々[72])も「中華人民共和国の神聖な領土の一部」とみなし、台湾を実効支配下に置くこと(祖国統一)を「台湾の同胞を含む全中国人民の神聖な責務」であると憲法前文で規定している。中華人民共和国の現行憲法は5回改正されている[73]。習近平が最高指導者となると権力集中の動きが強まり、2018年には憲法を改正して任期制限を撤廃し、2022年第二十回党大会からは実際に3期目を務めることとなった[74]。
国家の統治体制
[編集]憲法より上位の存在である中国共産党と憲法を拠り所とするその衛星政党(「民主党派」)以外の政党は認められておらず、国民には結党の自由がない。
立法機関として全国人民代表大会が置かれ、行政機関として、国務院が、司法機関として、最高人民法院と最高人民検察院が存在する。法律上は全国人民代表大会に権限が集中する。この他に衛星政党や各団体、各界の代表なども参加する中国人民政治協商会議が存在するが、「国政助言機関」[75] であって法律の制定権などは持っていない。三権分立の相互抑制メカニズムは存在しない(民主集中制)。
実際には国政を動かすのは中国共産党であり、共産党の最高指導集団である中央政治局常務委員会が権力を掌握する構造となっている、実権は中国共産党中央委員会総書記が握っていた、中華人民共和国主席(国家主席)の権限は儀礼的・名誉的なもので、彼らの権力の源泉は支配政党である共産党の総書記職であった。現行の中華人民共和国憲法には国家元首の規定がなく、外交慣例上では国家主席は元首と同様の待遇を受けている。

2022年10月現在の最高指導グループである第20期の中国共産党中央政治局常務委員は以下の通り。
- 習近平 - 序列第1位 中国共産党総書記(最高指導者の役職)、国家主席、中央軍事委員会主席
- 李強 - 序列第2位 国務院総理(首相)
- 趙楽際 - 序列第3位 全人代委員長(国会議長)
- 王滬寧 - 序列第4位 全国政協主席(統一戦線議長)
- 蔡奇 - 序列第5位 中央書記処書記、党中央弁公庁主任(党幹事長)
- 丁薛祥 - 序列第6位 国務院副総理(副首相)
- 李希 - 序列第7位 中央規律検査委員会書記(党紀委員会委員長)
一国二制度
[編集]
1997年にイギリス統治から返還された香港、1999年にポルトガル統治から返還されたマカオは、一国二制度(一国両制)の下、特別行政区として高度な自治権を有する。香港基本法により、高度な自治、独自の行政、経済および法制度を持ち、本土の法律は一部を除いて適用されない。間接選挙であるが、行政長官選挙が行われ、立法会では一部議員を直接選挙で選出している。さらに、参加資格を主権国家に限定していない国際組織への加盟や国際会議への参加も可能。
国際関係
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概要
[編集]中華人民共和国の国際関係において特筆すべきことは、同国政府が中華民国政府と同時に自らを「『中国』の正統な政府」であると主張している点である。
中華人民共和国は、冷戦構造の下、建国当初は完全に東側陣営に組み込まれていた(向ソ一辺倒)。しかし、1956年のスターリン批判後の中ソ対立で決裂した。1968年のプラハの春におけるソ連の軍事介入を「社会帝国主義」と批判し、同じく共産圏でソ連と距離を取るルーマニアやユーゴスラビア、北朝鮮、アルバニアなどとの関係を深めた。このころの中華人民共和国は、アジア・アフリカ会議や非同盟運動に関わるなど第三世界と連携しており、人民戦争理論など第三世界の左派に与えた影響は大きい。
東側諸国や第三世界の支持も集めた国際連合総会に於けるアルバニア決議によって国連安保理の常任理事国となって中華民国を国連から追放し、さらにアルバニア決議に反対した日米にも接近して1972年のニクソン大統領の中国訪問と日中共同声明採択によってアメリカ合衆国と日本を始めとする西側諸国との関係の回復を果たした。
また、3つの世界論を掲げて冷戦下における西側諸国と東側諸国との微妙なバランスをとりつつ、「中国を代表する正当な政府は中華民国ではなく、中華人民共和国である」とする一つの中国政策を東側だけでなく、西側諸国の多くに確認させることも成功を収めた。
1978年から始まる改革開放路線以降、経済面での資本主義諸国との関係も強め、2001年には世界貿易機関(WTO)にも加盟した。冷戦終結後は北大西洋条約機構に対抗してロシア、中央アジア諸国と連携を強化し(上海協力機構、SCO)、また、東南アジア諸国ともASEAN自由貿易地域でFTAを締結、かつては戦火を交えた大韓民国やさらには中華民国ともFTAを締結するなど、経済活動を絡めた積極的な地域外交を展開している。韓国とともに同じASEAN+3でもある日本に対しては胡錦涛政権は、対日新思考を打ち出した。
区分としては開発途上国に含まれるため、国際会議などで「開発途上国の代表」と表現されることはあるも、G77では中華人民共和国はG77の支持国を自任してるため[76]、公式声明や国連の決議文書などでGroup 77 and China(G77プラス中国)を使用してきた[77]。また、開発途上国であることを理由に、日本などの先進国から長年に渡り膨大な開発援助を受けているが、一方で他のさらに貧しい国に対して、国際的影響力を確保することを目的として開発援助を行っている。例えば、アフリカ連合本部は中国政府の全額負担で建設された。
急速な経済成長を遂げ、中国人民解放軍の軍備拡張を続ける中華人民共和国に対して、周辺諸国やアメリカは警戒感を持ち(中国脅威論)、また、人権問題・両岸問題・国境問題など、中華人民共和国の国際関係は緊張をはらむ。
中国に対するグローバルな認識
[編集]調査対象国 | 肯定 | 否定 | どちらでもない | 肯定-否定 |
---|---|---|---|---|
![]() | 9% | 86% | 5 | -77 |
![]() | 14% | 85% | 1 | -71 |
![]() | 15% | 81% | 4 | -66 |
![]() | 22% | 75% | 3 | -53 |
![]() | 22% | 74% | 4 | -52 |
![]() | 22% | 73% | 5 | -51 |
![]() | 24% | 75% | 1 | -51 |
![]() | 23% | 73% | 4 | -50 |
![]() | 25% | 73% | 2 | -48 |
![]() | 24% | 71% | 5 | -47 |
![]() | 25% | 71% | 4 | -46 |
![]() | 26% | 70% | 4 | -44 |
![]() | 36% | 63% | 1 | -27 |
![]() | 38% | 62% | 0 | -24 |
調査対象国 | 肯定 | 否定 | 肯定-否定 |
---|---|---|---|
![]() | 15% | 68% | –53 |
![]() | 22% | 70% | –48 |
![]() | 19% | 60% | –41 |
![]() | 29% | 54% | –25 |
![]() | 35% | 60% | –25 |
![]() | 28% | 50% | –22 |
![]() | 37% | 58% | –21 |
![]() | 20% | 35% | –15 |
![]() | 37% | 51% | –14 |
![]() | 46% | 47% | –1 |
![]() | 45% | 38% | 7 |
![]() | 37% | 25% | 12 |
![]() | 49% | 34% | 15 |
![]() | 44% | 23% | 21 |
![]() | 55% | 26% | 29 |
![]() | 63% | 27% | 36 |
![]() | 63% | 12% | 51 |
![]() | 83% | 9% | 74 |
![]() | 88% | 10% | 78 |
調査対象国 | 肯定 | 否定 | 肯定-否定 |
---|---|---|---|
![]() | 25% | 69% | –44 |
![]() | 21% | 63% | –42 |
![]() | 24% | 61% | –37 |
![]() | 26% | 61% | –35 |
![]() | 31% | 64% | –33 |
![]() | 29% | 60% | –31 |
![]() | 29% | 59% | –30 |
![]() | 32% | 60% | –28 |
![]() | 32% | 59% | –27 |
![]() | 34% | 61% | –27 |
![]() | 34% | 57% | –23 |
![]() | 36% | 55% | –19 |
![]() | 30% | 47% | –17 |
![]() | 41% | 53% | –12 |
![]() | 37% | 48% | –11 |
![]() | 40% | 50% | –10 |
![]() | 36% | 45% | –9 |
![]() | 36% | 44% | –8 |
![]() | 39% | 47% | –8 |
![]() | 45% | 49% | –4 |
![]() | 39% | 41% | –2 |
![]() | 43% | 35% | 8 |
![]() | 49% | 36% | 13 |
![]() | 54% | 39% | 15 |
![]() | 47% | 31% | 16 |
![]() | 56% | 34% | 22 |
![]() | 51% | 29% | 22 |
![]() | 58% | 27% | 31 |
BBCワールドサービスやピュー・リサーチ・センターやユーロバロメーターが定期的に実施している世界各国を対象とした対他国感情に関する調査によれば、調査対象国における対中・対中国人感情は否定的な回答を示しており、中国は、世界に対して悪影響を与えていると評価されている。なかでも人権意識が強い欧米諸国は、チベット問題やウイグル問題や香港問題の影響から、中国に対する悪感情が形成されており、中国を否定的にとらえる回答が多い傾向にある。さらに、2020年にパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症が主要因となり、中華人民共和国国家安全部のシンクタンクである現代国際関係研究院は、反中感情が天安門事件以来の高まりとなっていると結論づけており[81]、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、欧州連合などの欧米諸国に限らず、係争地域で死者の出る衝突が起きたインド、韓国、日本、南シナ海問題を抱える東南アジア諸国連合関係国などのアジア諸国を含む国際社会での反中感情は過去最悪になっているとしている[82]。
2020年にシンガポールのシンクタンクであるISEASユソフ・イサーク研究所がASEAN諸国の政府高官、学者、専門家など1300人を対象に実施した調査によると、ASEAN諸国では中国の政治・経済的影響力への警戒感が広がっており、中国に不信感があるという割合は、2019年の52%弱から2020年には60%強に上昇し、また40%近くが「中国は現状の秩序を打ち壊そうとする勢力で、東南アジアを自らの影響圏に入れようとしている」との認識を示した[83]。ISEASユソフ・イサーク研究所は、「中国の著しい影響力に対する地域懸念は、強大なパワーの使い方に不透明感があるからだ」とし、中国の台頭が平和的ではないとの懸念を高めていると指摘しており、特に中国に対する不信感は、南シナ海問題で中国と争っているベトナムとフィリピンで際立っている[83]。
2021年5月、習近平総書記(最高指導者)は「自信を示すだけでなく謙虚で、信頼され、愛され、尊敬される中国のイメージづくりに努力しなければいけない」と語り、外国から「愛される中国のイメージづくり」を指示し、中国共産党が組織的に取り組み、予算を増やし、「知中的、親中的な国際世論の拡大」を実現するよう対外情報発信の強化を図るよう訴えた[84]。これは近年の中国外交は批判に対して攻撃的に反論する戦狼外交を展開してきたが、戦狼外交は中国内では支持を得ているが、国際社会では反中感情を高めており、高圧的な対外発信で中国の好感度が下がっていることへの反省があるとみられる[84]。
インド、パキスタン
[編集]インドとはバンドン会議などで成立当初関わってきた。しかし1955年に中国が独立していたチベットを併合。ダライ・ラマ14世がインドへ亡命するなど、印中関係は悪化した。またインドとパキスタンの係争地であるカシミールへ中国は介入を行い、インドとの関係は険悪した。その後も印中は衝突などがおこる。中国はインド洋を一帯一路のもと影響下におこうとしている。そのため、インドは日米豪と連携しQuadを結成している。
一方パキスタンは、ニクソン大統領の中国訪問を仲介した経緯などもあり関係が良好であり、近年はパキスタンが背後に居るとされているアフガニスタンのターリバーンへの影響を強めている。
アメリカ合衆国
[編集]中国はアメリカ合衆国を最大の諜報活動の対象としているとみられ、国家安全省の他に中国共産党や中国人民解放軍、国有企業もその活動に加わることがある。アメリカ合衆国政府の国家情報会議のジョエル・ブレナー(Joel F. Brenner)専門官は「米国を標的として活動する140カ国ほどの諜報機関でも、中国が最も活発」と述べた。また中国のスパイ活動研究の権威として知られるデービッド・ワイズは、軍事面でも超大国を目指す中国は、アメリカ合衆国を追い越すために、軍事機密を標的にしていると指摘し、近年ではF-35戦闘機の機密や核弾頭の軽量化技術を奪取したと述べた[85]。また、2005年7月、中国人民解放軍の朱成虎少将は「米国が台湾海峡での武力紛争に介入し中国を攻撃した場合、中国は対米核攻撃に踏み切る用意がある」と発言した[86]。
2015年5月、中国が南沙諸島で建設中の人工島を米偵察機が偵察した。この事件をめぐって、両国は2001年4月に米中両軍機が南シナ海上空で衝突して以来の緊張状態となった。アメリカ合衆国政府は、スプラトリー諸島(南沙諸島)の12海里以内に米軍機を進入させる可能性を表明しており、中国外務省は「言動を慎むよう求める。私たちは関係地域に対する監視を密にし、必要に応じて適切な措置を取る」と反発した[87]。なお、7月末にマレーシア航空370便墜落事故の残骸の一部が発見された。
以前はパナマは台湾と外交関係があり中国とは国交がなかったが、中国は、アメリカ合衆国の「裏庭」ともいわれるカリブ海に出ることを念頭に国交を樹立し、パナマ最大のマルゲリータ島港を99年租借する契約を交わした[88]。
トランプ政権後期ごろから米中関係が本格的に悪化しはじめ、アメリカの対中姿勢の硬化は後任のバイデン政権にも引き継がれ、2021年3月にバイデン大統領は米中関係を「21世紀における民主主義と専制主義の闘い」と定義づけた[89]。
台湾(中華民国)
[編集]「両岸」とは台湾海峡を挟んだ中国本土と台湾の海岸を指しており、そこから「両岸関係」は台湾を実効支配する中華民国と中華人民共和国との関係を指す言葉となっている(二つの中国)。
1946年から激化した第二次国共内戦に勝利した中国共産党が1949年に中華人民共和国を中国大陸に建国、同年中に中華民国政府は、1945年の日本の降伏に伴い接収していた台湾に移った。それ以来、中華人民共和国は中華民国と「中国における正統政府」の座を巡って対立し、両国共に互いの統治する地域の支配権を主張して譲らなかった(台湾問題)。
国共内戦の延長で1954年に「台湾解放宣言」[90] を出し、第一次台湾海峡危機(1954年 - 1955年)と金門砲戦(1958年 - 1979年)を起こしたが武力による台湾占領には至らなかった。
中華人民共和国政府は国際連合における「中国」代表権を求めて諸外国に外交的に働きかけた他、「中華民国政府が実効統治している台湾は中華人民共和国の領土」と見なして領有権を主張し、「台湾解放」の名の元に金門島への砲撃を度々行った。その後、冷戦下におけるアメリカとソ連の間の対立や、ソ連と中華人民共和国の対立の激化などの政治バランスの変化に伴い、中華民国が国連の「中国」代表権を喪失して国際的に孤立し、中華人民共和国も改革・開放を推進するようになると、中華人民共和国政府は「一国二制度」といった統一の枠組みの提案や「三通政策」といった穏健的な統一政策を通じて両岸関係の改善を図った。1992年には両国政府関係者が「一国共識、各自表述(「一つの中国」を共通認識とするが、解釈はそれぞれが行う)」の統一原則を確認するまでに至った。
だが、1990年代に入ると、中華民国では李登輝中華民国総統による政治体制の民主化が進められ、それに伴い中華民国では、中華民国とは別個の「台湾」という国家を創り上げる台湾独立運動(台独運動)が活発化し始めた。このような動きに対し、中華人民共和国は総統選挙(1996年から実施)における台独派(泛緑連盟)候補者の当選阻止を目指して軍事演習で威嚇するなど強硬姿勢をとった。しかし、いずれの選挙においても阻止するには至らなかった。
このことを教訓としてか、2005年3月14日には中華人民共和国で反国家分裂法が成立した。この法律は中華人民共和国による中華民国の武力併合に法的根拠を与えることを名目とする。こうした経緯で、今日の中華民国と中華人民共和国の関係は、台湾問題として東アジア地域の不安定要素と見る見方も一部で存在する。中華民国にも「台独」に反対する「中国派」の人々(泛藍連盟)が存在している。こうした動きにおいては、中国国民党が有力な存在である。国民党党首・連戦は、2005年4月26日~5月3日にかけて中華人民共和国を訪問、共産党党首・胡錦濤と60年ぶりの国共首脳会談を実施した。
2010年に台湾との間で両岸経済協力枠組協議(ECFA)が締結されたが、サービス貿易協定は4年後批准を拒まれた(ひまわり学生運動)。
2010年代に入ると一つの中国による台湾問題の解決を「(自国の)核心的利益の一つ」と規定するようになり、基本的には九二共識の合意に基づいた平和的な中国統一を目指しているが、一方で中国人民解放軍の武力による台湾制圧の可能性も指摘されている[91]。
中華民国海軍の元軍艦長で軍事評論家の呂礼詩は、中華人民共和国の習近平総書記(最高指導者)は自身のレガシーのためにも台湾統一にこだわると分析している[92]。
ロシア連邦
[編集]成立当初、「向ソ一辺倒」を掲げソ連とは密接な関係となり、経済支援も受けていた。しかしニキータ・フルシチョフによるスターリン批判に対し、中国は「修正主義」と強く批判した。一方ソ連は毛沢東による文化大革命などを批判。両国の関係は悪化し、中ソ国境紛争もおこる。ソビエト連邦の崩壊後にはロシアと良好な関係となる。2022年ロシアのウクライナ侵攻でロシアは欧州連合や日本などの親米に経済制裁を行われ、中露の関係は緊密化した。しかし、中国は近年中央アジアへの介入を実施しており、ロシアが警戒感を抱く可能性がある。
日本
[編集]日中関係史は古代からのものであるが、現在の日本国と中華人民共和国の外交は1972年9月29日の日中共同声明に始まる。その後両国は1978年8月12日、日中平和友好条約を締結した。日本国と中華人民共和国はサンフランシスコ平和条約に署名していないため日中平和友好条約が両国にとってのはじめての条約締結となる。
両岸関係がシーレーンの安否に関わる。中国産食品の安全性は輸入量と後述の環境汚染と関係して問題となる。
領土問題
[編集]インドとブータンを除く12カ国(ロシアなど)とは陸上国境の画定が完了しているものの[93]、島嶼部を巡っては中国の海洋進出に伴い、領土問題を複数抱えている。
ただし日本側の見解としては、中国側による尖閣諸島の領有権主張は、中国の勝手な主張であり、日本が有効に支配しているため、領土問題自体が存在していないとしている。
- 台湾本島・澎湖諸島・金門島・馬祖島・烏坵郷・東沙諸島(中華民国)
- タイパ島・コロアネ島・コタイ島・澳門半島(澳門)
- 香港島・九龍・新界・島部(香港)
- 西沙諸島(ベトナム、中華民国)
- 南沙諸島(中華民国、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ)
- 尖閣諸島(日本)
- マクマホンライン(アルナーチャル・プラデーシュ州)(インド)
- カシミール(アクサイチン)(インド)
- 間島・蘇岩礁(離於島)(韓国)
軍事
[編集]
中華人民共和国憲法によれば、形式的には、国家中央軍事委員会は中国人民解放軍(現役部隊、予備役部隊)、中国人民武装警察部隊、中国民兵など全国の武力を指導するとある。しかし現実は、中国共産党の党中央軍事委員会がほぼ国家中央軍事委員会のメンバーを兼ねており、実質的には中国共産党の指導の下、軍・警察を支配しており「中国共産党傘下の軍隊」となっている。
軍隊近代化のため、兵力20万人削減を、2015年9月3日の「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年記念式典」で習近平党総書記が表明し、総兵力は約150万人となった。
中華人民共和国には兵役制度が存在するが志願者で賄っている[94]。青年らは何らかの形で武装警察、あるいは現役の正規軍に任務につき、任務後は民兵の任務に就くことが可能である。こうした準軍事組織は150万人の武装警察、600万人の民兵があり、削減された解放軍兵士の受け皿にもなっている。
また、中華人民共和国は核兵器を保有している。
- 軍事費
ストックホルム国際平和研究所の統計によると、2020年の中華人民共和国の軍事費は為替レートベースで2520億ドル で、アメリカ合衆国に次いで世界で2位(世界シェア12.7%)であり、2011年比で76%増加した[95]。
中華人民共和国の軍事費の増加をアメリカ合衆国が非難をしており、中華人民共和国は「中国の国防は防御的なものであるし、今までの歴史に他国を侵略したこともない」と覇権目的ではないと反論している[96]。
中華人民共和国は湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争などで、アメリカ合衆国軍の軍事兵器や軍事システムや戦闘スタイルの革新による軍事的成果に影響されて、軍事兵器や軍事システムや戦闘スタイルの革新に力を入れている。
軍備近代化を印象付ける出来事として2007年1月18日、中華人民共和国が過去に打ち上げ廃棄処分となっていた人工衛星を弾道ミサイルによって破壊する実験を行い成功した。この実験に対しアメリカ航空宇宙局は、宇宙開発への危険性は無いものの、スペースデブリが発生するこの手の実験に関する懸念を表明した。2007年2月21日には、国際連合の宇宙空間平和利用委員会で、宇宙空間での人工衛星破壊を禁止する法案が採択された。
- 核先制不使用
2011年までの中国国防白書には「中国は、いつ、いかなる状況下であっても、核兵器を先制的に使用しない」と核保有国で唯一核の先制不使用を表明していたが、2013年から記述が削除された[97]。
なお2022年、核保有5ヶ国の共同声明では「核戦争に勝者はいない。核戦争を絶対に始めてはならない」と発表、新華社通信で馬朝旭外務次官は「中国は先制不使用を掲げている」と答えている[98]。
情報機関
[編集]- 国家安全部
- 中国人民解放軍
- 中国人民解放軍総政治部連絡部 - 傘下組織に中国国際友好連絡会(友連会)
- 中国人民解放軍総参謀部
- 中国人民解放軍総参謀部第二部(総参謀部情報部) - ヒューミント系の情報活動
- 中国人民解放軍総参謀部第三部(総参謀部技術偵察部) - シギント系の情報活動
- 中国人民解放軍総参謀部第四部(総参謀部電子部) - ハッカー攻撃など
- 公安部
- 網絡警察
- 網絡警察 - インターネットポリス(国家安全部と公安部の合同機関)
- 共産党