スキップ (カーリング)
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カーリング競技において、スキップ(英: skip)は、チームの主将である。スキップは、戦略を決定し、ハウス(ターゲットエリア)からカーリングシートの反対側にいる投球者に対し、ストーンを投げる際に目標とすべき場所をブラシで指示する。7投目、8投目を投げるフォースを担当することが一般的であるが、他のポジションでプレイすることもできる。
略記号として「S」が使用されることがある[1]。また、英語では「skipper(スキッパー)」と呼ばれることもあるほか、「skip」を「スキップの役割を担う」という意味の動詞としても使用する[2][3][4]。
通例として、スキップの名前でチームを識別する[5]。例えば、2018年平昌オリンピックのカーリング競技で銅メダルを獲得した日本女子代表チーム、LS北見(ロコ・ソラーレ)の場合、スキップの藤澤五月の名前を取って「Team Fujisawa」となる[6]。
役割
[編集]スキップはチーム全体を統率し、戦略的な指示を行う[7]。口頭の指示と身体的なジェスチャーを使って、チームメイトにショットをコールする[8]。予定しているショットの軌道を伝える場合、ブラシで氷上をタップしたり、他のストーンが関わる場合はそのストーンの方向にブラシを動かしたりすることが多い。一般的に、スキップはストーンに求められるウェイト(速さ)、ターン(回転)、ライン(ストーンが通るコース)を決め、投球者がストーンを投げる際に目標とすべき場所をブラシで指し示す。
ストーンが投げられると、スキップはショットのラインをコールし、ストーンがシート上を移動する間スイーパーとコミュニケーションをとる[9]。また、ストーンの軌道を判断し、ストーンの軌道を維持できるよう、スイーパーにスイープの指示をコールする。スキップはフォースを務めることが多く、最後の2投を緊張せずに投げることができなければならないのだが、通常、最後のストーンはエンドで最も重要なストーンとなるため、難しい任務となる[10][11]。また、最後の2投を担当する者として、ショットのレパートリーを幅広く持ち、様々な種類のショットを思い通りの場所に決める能力が求められる[8][10]。
試合が進むにつれ、スキップはストーンのタイミングやカーリングシートの特徴など、試合の様々な局面を判断し、最適なショットと戦略を選択することが求められる。また、氷を読み、氷の状態を考慮して試合を進めることが求められる[12]。さらに、チームの主将としてチームの各選手のプレースタイルと強みを理解し、能力に応じたショットをコールして、強みを生かした戦略を立てる[10]。また、相手の試合運びを観察し、相手の強みと弱みをピンポイントで把握して、相手を不利な局面に追い込むことができるように戦略を組み立てることが求められる[11]。
主な出来事
[編集]- 1927年に開催されたBrierでは、急遽結成された4人のスキップによるチームが優勝した[13]。
- 一般的にスキップはフォースを務めることが多いが、リード(例:マルガレータ・シーグフリードソン)、セカンド(例:ペーター・デクルス)、サード(例:ランディ・ファービー)を務めることもある。
- 2015年に開催されたTim Hortons Brierでは、2勝3敗でスタートしたTeam Canadaが大会の途中でスキップを変更し、優勝した[14]。
- 2018-2019シーズンでは、ケリー・エイナーソンがメンバー全員元スキップのチームを結成した[15]。このチームは2020年、2021年のScotties Tournament of Heartsで2年連続優勝した。
- 様々な競技レベルで「スキップ不在」が発生している。以下は、主な例である。
- 2019-2020シーズンでは、Team Rothのスキップ、ニナ・ロスが産休に入り、バイス・スキップのタビタ・ピーターソンがスキップを務めた[16]。
- 2019年のチャンピオンズカップでは、Team Hasselborgのスキップ、スウェーデンのアンナ・ハッセルボリが、同時期に開催されたミックスダブルスの世界大会にスウェーデン代表として出場するために不在となり、スコットランドのイブ・ミュアヘッドが代理のスキップを務めた[17][18]。
脚注
[編集]- ^ PyeongChang 2018 Replays - USA vs. SWE - Men's Curling - Full Gold Medal Match. Olympic Channel. 該当時間: 1:25:28. 2021年12月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ Ryan Horne (May 11, 2021). “Inspiring performances mark memorable campaign in Calgary bubble”. The Sports Network. 2022年2月16日閲覧。 “Can we talk for a second about skipper over here?”
- ^ “House Call: Don't Skip Out on Skipping”. Curling Canada (January 28, 2015). 2022年2月16日閲覧。
- ^ “Definition of skip (Entry 4 of 4)”. Merriam Webster. 2022年2月16日閲覧。
- ^ “THE RULES OF CURLING and Rules of Competition”. 世界カーリング連盟. 2021年6月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月16日閲覧。 “C2(m): For the purpose of identification to the media and to the public, teams are referred to by the name under which their Association/Federation competes, and by the name of the skip.”
- ^ “Team Fujisawa”. GLAND SLAM OF CURLING. 2022年2月16日閲覧。
- ^ CurlTech. “The Skip”. The Curling Manual. 2020年8月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月18日閲覧。
- ^ a b Weeks, Bob. “Curling For Dummies Cheat Sheet”. 2022年2月18日閲覧。
- ^ Weeks 2006 p. 69
- ^ a b c “House Call: Skipping to Victory”. カナダカーリング協会 (28 April 2011). 2022年2月18日閲覧。
- ^ a b Weeks 2006 p. 72
- ^ Weeks 2006 p. 73
- ^ Weeks, Bob (2008). Curling, Etcetera: A Whole Bunch of Stuff About the Roaring Game. ISBN 978-0470156131. "the only one able to make the trip was the skip, so he selected three other skips to join him."
- ^ Don Landry (March 3, 2015). “Switcheroo: Struggling Team Canada flips skip, vice at the Brier”. Yahoo Sports. 2022年2月18日閲覧。
- ^ Spencer, Donna (9 October 2018). “Canadian women's rink proving 4 skips as good — or better — than 1”. The Canadian Press. CBC Sports 9 October 2018閲覧. "Four skips on one curling team, how is that going to work?"
- ^ Jonathan Brazeau (November 7, 2019). “Gushue, Roth stay unbeaten to qualify for Tour Challenge playoffs”. Sportsnet. 2022年2月18日閲覧。 “Roth is away on maternity leave and third Tabitha Peterson has moved up to take the reins this week.”
- ^ Jonathan Brazeau (April 23, 2019). “Muirhead off to perfect start with Team Hasselborg at Champions Cup”. Sportsnet. 2022年2月18日閲覧。 “Team Anna Hasselborg [...and] Team Allison Flaxey kicked off [...] with neither Hasselborg nor Flaxey on the ice.”
- ^ “Muirhead to sub for Hasselborg at Champions Cup”. Grand Slam of Curling (2019年3月29日). 2022年2月18日閲覧。
参考文献
[編集]- Weeks, Bob (2006). Curling for Dummies, 2nd Edition. Mississauga, Ontario: John Wiley & Sons Canada, Ltd.. ISBN 978-0-470-83828-0