スペクトロベナトル
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スペクトロベナトル | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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骨格図(青色が発見部位) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
前期白亜紀バレミアン - アプチアン | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Spectrovenator Zaher et al., 2020 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
タイプ種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Spectrovenator ragei Zaher et al., 2020 |
スペクトロベナトル[1](学名:Spectrovenator、「ゴーストハンター」の意)は、前期白亜紀に現在でいうブラジルに生息した、基盤的アベリサウルス科に属する獣脚類の恐竜の属。Quiricó層から化石が産出したSpectrovenator rageiのみを含む単型の属である[2]。
発見と命名
[編集]スペクトロベナトルの唯一知られている標本MZSP-PV 833はサンパウロ大学の動物学博物館 (en) に所蔵されている。本標本はミナスジェライス州北部で発見されたもので、ほぼ完全な頭蓋骨、肋骨を伴った部分的な一連の頸椎・胴椎、完全な1個の仙椎、部分的な一連の尾椎、保存の良い後肢と腰帯から構成されている[2]。
タイプ種Spectrovenator rageiはZaher et al. (2020)により新属新種として命名された。属名はラテン語で「幽霊」を意味するspectrumと「狩人」を意味するvenatorに由来する。この命名は、当時フィールドでプレパレーション中であったティタノサウルス類Tapuiasaurus macedoiのホロタイプ標本の直下から本属のホロタイプ標本が予期せず発見されたことにちなむ[2]。
特徴
[編集]保存の良いスペクトロベナトルの頭蓋骨には、本属がジュラ紀のアベリサウルス科と前期白亜紀のアベリサウルス科との中間的な分類群であることを示す特徴が存在する。本属は別の基盤的アベリサウルス科であるルゴプスと頭蓋骨の特徴を共有しており、系統樹において同様の位置にあったことが示唆される。より派生的な分類群は下顎の筋肉を収容するより幅広な空間を持つ適応を遂げているが、スペクトロベナトルはその適応を欠いており、頭蓋骨の側頭部に祖先形質(上側頭窩の間に存在する幅広な頭頂骨と、後眼窩骨の長く伸びた鱗状骨突起)が存在する。これらの形質から、スペクトロベナトルの咬合力がより派生的なアベリサウルス科と比較して弱かったことが示唆され、アベリサウルス科が進化の過程で咬合力を増大させた可能性が考えられる。Zaher et al. (2020)は、スペクトロベナトルが示す基盤的特徴の数に基づき、アベリサウルス科に特徴的な採食戦略のために必要な適応を示すアベリサウルス科の属がセノマニアン期以降に限られると結論した[2]。
スペクトロベナトルは頭蓋骨に存在する特徴に基づいて他のアベリサウルス科の属・種から区別される。具体的には、上顎骨-頬骨縫合線の前側に存在する滑らかな領域を除いて垂直方向の溝により上顎骨の後側枝が装飾を受けていること、腹側部を除いて涙骨の外側面が粗いこと、頬骨の後側突起が腹側に向いていること、項稜が薄く滑らかな背側縁を伴うこと、歯骨の腹側縁が直線状であり外側面に深い溝を伴うこと、上角骨の背側縁が僅かに凸であること、下顎枝の後腹側に沿って長軸方向の稜が存在することが挙げられ[2]。
スペクトロベナトルの化石は横方向に凹な鼻骨と、頭蓋天井上の大型な孔の列を保存している。これらは外側鼻血管・眼窩上血管や三叉神経におそらく関連する血管と神経の存在を示唆する可能性がある[2]。
分類
[編集]Zaher et al. (2020)は系統解析によりスペクトロベナトルをアベリサウルス科に位置付け、多数の形質がこの配置を支持するとした。スペクトロベナトルを基盤的アベリサウルス科とする結果は形態学とも調和的である。以下は解析結果を簡略化したクラドグラム[2]。
アベリサウルス科 |
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出典
[編集]- ^ “こんな恐竜知っている? どの図鑑にも載っていない最新の恐竜たちを図鑑MOVEが解説!”. 講談社の動く図鑑move. 講談社 (2024年3月14日). 2024年6月23日閲覧。
- ^ a b c d e f g Zaher, H.; Pol, D.; Navarro, B.A.; Delcourt, R.; Carvalho, A.B. (October 2020). “An Early Cretaceous theropod dinosaur from Brazil sheds light on the cranial evolution of the Abelisauridae” (英語). Comptes Rendus Palevol 19 (6): 101–115. doi:10.5852/cr-palevol2020v19a6 .