ペロリ

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株式会社ペロリ
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
150-0002
東京都渋谷区渋谷2-12-4ネクストサイト渋谷ビル11F・12F[1]
設立 2012年8月
業種 サービス業
法人番号 1010401101312 ウィキデータを編集
代表者 江端浩人
外部リンク http://peroli.jp
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株式会社ペロリは、インターネット上でのメディア事業を行う日本の会社である。[1]ディー・エヌ・エーの子会社。

インターネットメディア事業、WEB広告事業、EC事業、女性向けファッションや美容を扱うキュレーションプラットフォーム「MERY」(2016年12月休止)の開発・運営を行う。中川綾太郎が2012年8月に設立した[1]。所在地は東京都渋谷区[1]

「MERY」はキュレーションサイトとしては高いCGM比率(ユーザーが投稿した記事の割合)とPV数を持ち、2014年に中川は友人の村田マリの紹介でディー・エヌ・エーに事業を売却。「MERY」は2016年までに月間ユニークユーザー数2000万を超え、若い女性に広く認知されるメディアとなった[2]。2016年にディー・エヌ・エーのキュレーションサイトに批判が高まって休止し、中川は2017年3月に社長を辞任した。2017年4月から江端浩人が社長を務め[3]、法人としては存続している。

沿革[編集]

創業[編集]

2012年8月にEast Ventures佐俣アンリanriファンドの出資を受け[4]中川綾太郎がエンジニアの河合真吾、デザイナーの有川鴻哉と共同でペロリを創業[5]。最初は社員は2、3人だった[4]

2013年からキュレーションプラットフォーム事業「MERY」を開始[6]女性向けに特化したファッション美容に関する記事を提供するプラットフォームで、「トレンドを敏感に感じ取る女の子を対象に『おしゃれ』や『かわいい』に関するあらゆる情報をキュレーションするメディア」としている。記事は美容師ネイリスト編集者などからも投稿されていた[7]。社長の中川によれば、2014年までに「美容師キューレターは100名近くになって」きていた[8]

2014年半ばまでに月間アクティブユーザー数1200万人を超えた[7]

ディー・エヌ・エーによる買収[編集]

2014年からペロリはディー・エヌ・エーの子会社になり、ディー・エヌ・エーのキュレーション事業の一角として中川のもとで運営された。

創業者中川の友人でキュレーションサイト「iemo」を運営する村田マリの紹介で、2014年にディー・エヌ・エーに事業を売却[9]。iemo、ペロリと2社合わせて約50億円での買収[7]で、それぞれの買収金額は非公表だが、iemoが約15億円、ペロリが約35億円と見られている[10]。中川はディー・エヌ・エー子会社となったペロリの代表を務め、MERYを運営[11]、2016年2月にTVCMを打ち、3月に人気モデルや女優を起用した紙の雑誌『MERY』を創刊[4]。MERYは最初ウェブが主であったが、アプリ中心に移行した。2016年8月時点で、正社員が85名ぐらい、従業員全体では100名を超えた[4]。2016年8月時点で、月間2,000万UU、月間4億PVほどで、アプリが500万ダウンロードと人気を博した[4]。メインの読者は、スマホ世代の10〜20代の女性で、アプリやブラウザで日常的に利用する読者も多かった[12]。9割以上のユーザーがスマホから利用していた[4]

2016年3月に雑誌版「MERY」を発行しほぼ5万部を完売した[2]。MERYは女性の支持を集めたとはいえ、当初赤字だった。2016年の3月に黒字化したが、収益の規模は明らかにされていない。[13]

MERY閉鎖[編集]

MERYの記事には盗用があるという批判があり、ディー・エヌ・エーの法務部門はMERYの買収時に著作権違反についての警告をしていた[14]。中川は著作権侵害について、「初期にはそういうことがあったかもしれないが、今は日々数百万人のユーザーを幸せにしているサービスを作れていることに誇りを持っている」と答えたといわれる[15]。2016年冬に、ディー・エヌ・エーが運営する「WELQ」などのキュレーションサイトに他サイトからの盗用を推奨していると取れるマニュアルがあったことが明らかになり、12月1日にWELQ、iemoを含む9サイトが閉鎖[16][17]。この段階ではペロリが運営するMERYは「そのような運営は行っていないと確認できた」として唯一継続していた[18]。MERYでも無断転用の疑いがある記事の削除が進み[19]、一部の記事だけが削除されるはずが、実際には8割の記事が非公開化されたことが後でわかり、ディー・エヌ・エーは12月5日にMERYの公開も停止[18]。ディー・エヌ・エー経営陣は謝罪会見を行った[18][20][18]

MERYの閉鎖を惜しむユーザーも多く、メリーロスという言葉も生まれた。[12][21]

2017年3月のディー・エヌ・エーの会見、第三者委員会の報告で相当なコンプライアンス違反があったことが公表され、直接の事業責任者のひとりである中川は株式会社ペロリの社長を辞任した[22]。調査では社長の守安功が現場に相談なく高い数値目標を掲げていたことも指摘されており、ディー・エヌ・エー会長の南場智子は、中川とキュレーション事業責任者の村田マリは誠心誠意事業に打ち込んでおり悪徳なことを考えていたわけではないとし、「この2人の有能な若者を正しく導けなかったディー・エヌ・エーの責任は極めて重い」と述べた[14]

再出発[編集]

2017年4月に日本コカ・コーラ日本マイクロソフトでマーケティング部門を指揮した江端浩人が、ディー・エヌ・エーに入社し、キュレーション事業を統轄するメディア統括部長、子会社のペロリ、iemo、Find Travel各社の社長に就任した。ディー・エヌ・エーはこれら事業の再開の見通しは白紙だとし、江端に検討させていた[3]。その後ディー・エヌ・エー単独での事業継続を断念し、小学館とディー・エヌ・エーとの共同出資の新会社「株式会社MERY」を8月に設立しMERYの事業を当該会社に移管させて再開を目指すこととした。そして11月21日正式にリ・スタート版が公開された。旧MERYの記事および一般投稿を一切使わず、紙媒体コンテンツの本職である小学館の主導で運営体制を一新した完全新生版となる。

株式会社ペロリはそのまま存続し、非公開化前に生じた問題について引き続き対応する。

問題[編集]

体制[編集]

MERYはキュレーションサイト、プラットフォームとされていた。中川綾太郎は2015年に、MERYのCGM比率(ユーザーが投稿した記事の割合)は10~20%以上あると述べていた[23]。比較的ユーザー投稿が多いといえど、大多数はペロリが組織した約140人におよぶ女子大生インターンが記事を書いており、1割がクラウドソーシングで外注されていた[24]。ディー・エヌ・エー傘下のペロリのインターン生としてMERYで記事を書いていたという女子大生は、インターン生はキュレーターと呼ばれ100人以上はおり、実質アルバイトの扱いで時給をもらっていたと2016年に語った。記事作成には厳しいノルマがあり、どのサイトからどのようにキュレートするかという具体的なマニュアルを渡されていたという。[25]

2017年の第三者委員会の報告によると、MERYが目指していたのは「ニーズを生み出す」記事であり、中川は「インターンやアルバイトライターが、ユーザーと同じ目線で、自分が好きな物や良いと思う物を紹介する記事を執筆することにより、紹介された物やサービスにニーズを生み出す」ことを目指し、これはプロのライターではできないと考えていたという。インターンは複数のチームに分けられ、チームリーダーやリーダー統括をする「部長」と呼ばれる中間管理職業務もインターンが行った。この体制は読者に受ける記事を量産できる一方、たった2名の社員で時に月間5000を超えた記事をチェックするなどのリスクもあった。ITジャーナリスト本田雅一は、ペロリには企業統治への意識がほとんど存在していなかったと考えられると述べている[21]

報告書によると、村田マリが統括したディー・エヌ・エーのキュレーション事業はSEOアフィリエイトを重視する社長守安功の意向を強く受けていたが、MERYは比較的距離が遠く、中川は過度なSEOはMERYの価値を損なうと考え、読者の立場から読者が求めるものを企画する方針を取っていたという。女子大生のインターンたちに当事者目線で記事を作成させる体制がMERYの高い人気につながっていたが、チェックの甘さ、画像の不正な使用という問題を引き起こし、読者が投稿するプラットフォームであり記事に責任は負わないという言い訳を不可能にした。[26]

画像[編集]

2017年の第三者委員会の報告によると、ディー・エヌ・エーのキュレーション事業で使われた73万件近い画像に著作権侵害の可能性があり、そのうちの52万件近くがMERYのものだった[21][14]。これはディー・エヌ・エーのキュレーション事業10サイトで著作権侵害が疑われた画像の7割にあたる[14]BuzzFeed Japanの伊藤大地・古田大輔は、この背景として、ペロリ側は「ディー・エヌ・エーに買収されたあと、誰でも投稿できるプラットフォームになった」と考えた一方、ディー・エヌ・エー側は「今後、プロバイダ責任法を適用できるプラットフォームになる」と捉えていたという、現状認識の差を指摘している。[26]

買収前に使用する他サイトの画像は「直リンク方式にする」と決めていたが、引用元サイトに負荷がかかること、表示が遅くなることから独断で変更し、利用許諾なしに画像をコピーし自社サーバーに保存し掲載していた[14]。第三者委員会の調査で、この行為は極めて不適切であると指摘され、ペロリは方針転換をディー・エヌ・エー側に伝えていると考えていたが、ディー・エヌ・エー側で把握していた者はいないことが明らかになった[14]

出典[編集]

  1. ^ a b c d About us 公式サイト
  2. ^ a b 山崎春奈,ITmedia「今や雑誌は情報ではなく“雑貨”」――女性向けWebメディア「MERY」が紙の雑誌を創刊した理由 2016年06月28日 11時00分 更新
  3. ^ a b DeNA キュレーション担当の新部長 社外から就任 毎日新聞2017年4月3日
  4. ^ a b c d e f 株式会社ペロリ (2016年8月4日). “「MERY」はどうやって生まれたのか? ペロリ創業メンバーの頭の中にあった“成功への道筋””. ログミー. 2017年1月16日閲覧。
  5. ^ 「MERY」はどうやって生まれたのか? ペロリ創業メンバーの頭の中にあった“成功への道筋” - ログミー 2016年8月4日
  6. ^ dotFes 2016 渋谷 | creative conference
  7. ^ a b c Satoru Masuda (2014年10月1日). “DeNAがiemoとMERYの2社を計50億円で買収、キュレーション事業に参入”. TechCrunch Japan. 2016年12月10日閲覧。
  8. ^ 株式会社ペロリ 中川綾太郎さん「美容師が、専門性や質の高い情報をたくさんの女の子達に届けられるように」 2014.02.03 Mon Bireki Magazine
  9. ^ ベンチャー投資 | 株式会社ディー・エヌ・エー【DeNA】
  10. ^ 井上理 (2016年12月16日). “DeNA転落の起点 買収と譲渡、2つの過ち 村田マリ氏とのシンガポールの夜”. 日経ビジネス. 2017年1月16日閲覧。
  11. ^ アジアを代表する「30歳未満」に田中将大、錦織圭らが選出 フォーブス・ジャパン 2016/02/26 12:44
  12. ^ a b 「こんなのないよね、が絶対あったんです」MERYは何が“特別”だったの?愛読者に聞く SEOでは買えない愛。 BuzzFeed 2016年12月15日
  13. ^ WELQ問題の真相を読み解く(2)「買収の経緯に関して極めて不透明」~山本一郎×古田大輔×三上洋特別鼎談 デイリーニュースオンライン 2017.04.20
  14. ^ a b c d e f 井上 理 ニュースを斬る DeNA問題、もみ消された社内からの警告 調査報告書で守安社長の“独断”が浮き彫りに 日経ビジネス 2017年3月15日
  15. ^ 大熊 将八 DeNA・村田マリ執行役員が落ちた「ベンチャードリーム」の罠 2016.12.13
  16. ^ 志田義寧 (2016年12月1日). “DeNAが9メディアの記事を非公開に、転用奨励で批判相次ぐ”. ロイター. 2017年1月16日閲覧。
  17. ^ Yuhei Iwamoto (2016年12月1日). “信頼性なき医療メディア「WELQ」に揺れるDeNA、MERYを除く全キュレーションメディアを非公開に”. TechCrunch Japan. 2017年1月16日閲覧。
  18. ^ a b c d 中嶋よしふみ (2016年12月9日). “キュレーションメディアのiemo・MERYに50億円を投じた経営責任 ~DeNAの謝罪会見を解説~”. ハフィントンポスト. 2017年1月16日閲覧。
  19. ^ 信原一貴 (2016年12月2日). “DeNA、人気サイト「MERY」の記事も大量削除「無断転用した可能性」”. withnews. 2017年1月16日閲覧。
  20. ^ 広岡延隆 (2016年12月6日). “DeNAが示せなかった自浄能力 希望的観測と五月雨対応が信頼失墜を招く”. 日経ビジネスオンライン. 2017年1月16日閲覧。
  21. ^ a b c 本田雅一 MERYは守安氏に従わなかったから成功した 東洋経済オンライン
  22. ^ Shota Niikuni DeNA南場氏「キュレーションメディアの再開は全くの白紙」、WELQ問題でDeNAが会見 TechCrunch Japan 2017年3月14日
  23. ^ 梅木雄平 mery中川氏「CGM比率20%以上はありま〜す!」 #bdc 株式会社The Startup 2015年04月10日
  24. ^ DeNA南場会長「WELQを検索して愕然とした」--キュレーション事業に関して謝罪 CNET Japan 山川晶之 (編集部) 2016/12/07
  25. ^ 「MERY」記事量産、経験者が語る現場 「ノルマ90分に1本、遅いと指導も」 ハフィントンポスト 2016年12月11日
  26. ^ a b 伊藤大地・古田大輔 MERYだけが読者を見ていた。SEO重視を突っぱねた編集方針 甘かったチェック体制 愛されていたメディアが辿った道 BuzzFeed 2017年3月13日

外部リンク[編集]