ミズナギドリ科

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ミズナギドリ科
クロミズナギドリ
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: ミズナギドリ目 Procellariiformes
: ミズナギドリ科 Procellariidae
学名
Procellariidae Leach1820
シノニム

Puffinidae

和名
ミズナギドリ(水薙鳥)
英名
Petrels, Shearwaters
Shearwaters, Fulmars
  • フルマカモメ族 Fulmarini
  • クジラドリ類
  • シロハラミズナギドリ族 Pterodromini
  • クロミズナギドリ族 Procellariini
  • ミズナギドリ族 Puffinini

ミズナギドリ科(みずなぎどりか、学名 Procellariidae)は、鳥類ミズナギドリ目の科である。

ミズナギドリ(水凪鳥、水薙鳥)と総称される[1]

特徴

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分布

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全世界の海洋(南極海を含む)。

形態

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全長26–87cm[1]

上面が黒や灰色、褐色の羽毛で覆われる種が多い。

の先は鉤状に尖る。

が白く、成体との比率で大型(体重の6–20%)である。

生態

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海洋に生息する。風の強い高所から風の弱い低所に急降下し、急降下の勢いと風力の差を利用して再び高所へ上がる「ダイナミック・ソアリング」を繰り返し長時間羽ばたかずに飛翔する。水面ギリギリの急旋回は1秒間に2回程度の非常に速いペースで絶え間なく行われ、この飛翔が翼で水面を切る(薙ぐ)ように見えることが和名や英語名(shearwater = 水を切る)の由来である。多くの種では長距離の渡りをする。

食性は動物食で、魚類甲殻類軟体動物などを食べる。種によってはプランクトン動物の死骸を食べる。

集団繁殖地(コロニー)を形成する。地面に掘った穴や岩の隙間などにを作り、1腹に1個の卵を年に1回産む。雌雄交代で抱卵する。

オニミズナギドリの嗅覚を奪うと、巣から餌を捜しに行った先から帰れなくなることが報告されており、嗅覚によって飛行進路を決定している可能性が高い[2]

系統と分類

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系統樹の科間は Hackett et al. (2008)[3]、科内は Nunn & Stanley (1998)[4]; Penhallurick & Wink (2004)[5]Pseudobulweria の位置は Bretagnolle et al. (1998)[6]より。

ミズナギドリ目

アホウドリ科 Diomedeidae

広義のミズナギドリ科
ミズナギドリ科
フルマカモメ族

オオフルマカモメ属 Macronectes

フルマカモメ属 Fulmarus

ナンキョクフルマカモメ Thalassoica

マダラフルマカモメ Daption

ユキドリ属 Pagodroma

クジラドリ類

アオミズナギドリ Halobaena

クジラドリ属 Pachyptila

シロハラミズナギドリ族

シロハラミズナギドリ属 Pterodroma

クロミズナギドリ族

クロミズナギドリ属 Procellaria

アナドリ属 Bulweria

ミズナギドリ族

? Pseudobulweria

ケルゲレンミズナギドリ Aphrodroma

オオミズナギドリ属 Calonectris

ミズナギドリ属 Puffinus s.s.

ハイイロミズナギドリ属 Ardenna

モグリウミツバメ科 Pelecanoididae

ウミツバメ亜科 Hydrobatinae

アシナガウミツバメ亜科 Oceanitinae

ミズナギドリ科の姉妹群はモグリウミツバメ科である。ただしミズナギドリ科の単系統性は不確実で、モグリウミツバメ科を内包する側系統の可能性がある。そのため、モグリウミツバメ科を(ときにモグリウミツバメ亜科 Pelecanoidinae またはモグリウミツバメ族 Pelecanoidini として)含める説もある[5][7]

ミズナギドリ科は従来はフルマカモメ類・クジラドリ類・シロハラミズナギドリ類・ミズナギドリ類の4グループに分けられてきたが[1][7]、系統的には5グループに分かれる。Penhallurick & Wink はそれらを族としているが、ただし彼らはクジラドリ族を incertae sedis としている。従来の分類に比して、シロハラミズナギドリ類からケルゲレンミズナギドリとおそらく Pseudobulweria 属がミズナギドリ族に移され、シロハラミズナギドリ類のアナドリ属とミズナギドリ類のクロミズナギドリ属がクロミズナギドリ族にまとめられた。しかしこれら5族の間の系統関係は不明である。

ミズナギドリ属はおそらく単系統ではなく、ハイイロミズナギドリ属を分離する説がある[8](図では分離している)。

なお Penhallurick & Wink は、モグリウミツバメ科を含むミズナギドリ科を2亜科5族に、つまり、ミズナギドリ亜科 Procellariinae(フルマカモメ族+クロミズナギドリ族+ミズナギドリ族)とモグリウミツバメ亜科 Pelecanoidinae(シロハラミズナギドリ族+モグリウミツバメ族)に分類している。ただしクジラドリ類はいずれにも含まれない。

歴史

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古くは Coues (1864, 1866); Huxley (1867) などにより、現在のミズナギドリ目全体がミズナギドリ科とされた。その後、Forbes (1882)ウミツバメ科 Oceanitidae を分離したのに始まり、さまざまな範囲がミズナギドリ科とされたが、Loomis (1923) により現在とほぼ同じ科分類となった。

ほとんどの分類でミズナギドリ科はミズナギドリ目最大の科であり、しばしば亜科に分割された。ミズナギドリ亜科 Procellariinae、アホウドリ亜科 Diomedeinae、モグリウミツバメ亜科 Halodrominae、フルマカモメ亜科 Fulmarinae、ミズナギドリ亜科 Puffininae、ウミツバメ亜科 Oceanitinae などの亜科名が使われた[9]

Siblet & Ahlquist (1990) は、現在のミズナギドリ目全体をミズナギドリ科とし、アホウドリ亜科 Diomedeinae(アホウドリ科)・ミズナギドリ亜科 Procellariinae(ミズナギドリ科+モグリウミツバメ科)・ウミツバメ亜科 Hydrobatinae(ウミツバメ科)に分けた。

属と種

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国際鳥類学会議 (IOC)[8]より。ただし族に分類した。和名は厚生労働省[10]などより。

14属86種が現生。広域に分布するうえに行動範囲の広い種が多く、さらに同種間でも色彩変異が大きいことから分類は混乱している。

フルマカモメ族

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クジラドリ類

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シロハラミズナギドリ族

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クロミズナギドリ族

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ミズナギドリ族

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人間との関係

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開発による繁殖地の破壊、水質汚染、漁業による混獲、食用や羽毛目的の乱獲、人為的に移入された動物による捕食などにより生息数が減少している種もいる。

1974年6月、高知県沖で約4500羽、千葉県沖で約5000羽など太平洋側で大量死が確認された。さらに福島県沖合で約1500羽が衰弱していることが確認されたことから、福島県海上保安庁が連携して、巡視艇から小魚の餌付けを行った記録がある[11]

画像

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出典

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  1. ^ a b c 長谷川博, “ミズナギドリ”, 日本大百科全書, Yahoo!百科事典, 小学館, http://100.yahoo.co.jp/detail/%E3%83%9F%E3%82%BA%E3%83%8A%E3%82%AE%E3%83%89%E3%83%AA/ 
  2. ^ 海鳥の一部、嗅覚を頼りに飛行進路を決定か 実験”. AFP (2017年8月30日). 2022年7月12日閲覧。
  3. ^ Hackett, S.J.; Kimball, R.T.; Reddy, S.; Bowie, R.C.K.; Braun, E.L.; Braun, M.J.; Chojnowski, J.L.; Cox, W.A. et al. (2008), “A Phylogenomic Study of Birds Reveals Their Evolutionary History”, Science 320 (5884): 1763–1768 
  4. ^ Nunn, G.B.; Stanley, S.E. (1998), “Body size effects and rates of cytochrome b evolution in tube-nosed seabirds”, Mol. Biol. Evol. 15: 1360–1371, http://mbe.oxfordjournals.org/cgi/reprint/15/10/1360.pdf 
  5. ^ a b J., Penhallurick; Wink, M. (2004), “Analysis of the taxonomy and nomenclature of the Procellariiformes based on complete nucleotide sequences of the mitochondrial cytochrom b gene”, Emu 104: 125–147, http://shearwater.nl/seabird-osteology/REFERENCES/Penhallurick_Wink_2004_procellariiform_taxonomy2.pdf 
  6. ^ Bretagnolle, V.; Attié, C.; Pasquet, E. (1998), “Cytochrome-b evidence for validity and phylogenetic relationships of Pseudobulweria and Bulweria (Procellariidae)”, Auk 115: 188–195, http://www.cebc.cnrs.fr/publipdf/1998/BAUK115.pdf 
  7. ^ a b Christidis, L.; Boles, W. (2009), Systematics and Taxonomy of Australian Birds, CSIRO Publishing 
  8. ^ a b Gill, F.; Donsker, D., eds. (2010), “Loons, penguins, & petrels”, IOC World Bird Names, version 2.6, オリジナルの2013年4月13日時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20130413072446/http://www.worldbirdnames.org/n-penguins.html 
  9. ^ Sibley, C.G.; Ahlquist, J.E. (1972), Order Procellariiformes, “A Comparative Study of the Egg White Proteins of Non-Passerine Birds”, Peabody Museum of Natural History and Department of Biology, Yale University, Bulletin 39 (New Heaven, CT)  - 1972年までの分類史は主にこの文献による
  10. ^ 厚生労働省 動物の輸入届出制度 届出対象動物の種類名リスト 鳥類一覧
  11. ^ 「ミズナギドリ洋上救出作戦 腹ペコ群へ小魚」『朝日新聞』昭和49年(1974年)6月15日朝刊、13版、19面

参考文献

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  • 安部直哉 『山渓名前図鑑 野鳥の名前』、山と渓谷社2008年、263頁。
  • 小原秀雄浦本昌紀太田英利松井正文 編著 『レッド・データ・アニマルズ6 アフリカ』、講談社2000年、80, 179頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文 編著 『レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』、講談社、2000年、178–179頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文 編著 『レッド・データ・アニマルズ7 オーストラリア、ニューギニア』、講談社、2000年、86–87, 168–169頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文 編著 『レッド・データ・アニマルズ3 中央・南アメリカ』、講談社、2001年、55, 179–181頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文 編著 『レッド・データ・アニマルズ8 太平洋、インド洋』、講談社、2001年、67–69, 176–180頁。
  • 桐原政志 『日本の鳥550 水辺の鳥』、文一総合出版2000年、32–46頁。
  • 黒田長久 監修、C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン 編 『動物大百科7 鳥I』、平凡社1986年、53–57頁。
  • 高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会2007年、68–76頁。
  • 中村登流 監修 『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社1984年、138頁。
  • 真木広造大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、24–36頁。
  • 『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館2002年、17–18, 119頁。