メガロサウルス科
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メガロサウルス科 Megalosauridae | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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トルヴォサウルスの復元骨格 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ジュラ紀中期 - ジュラ紀後期 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Megalosauridae Huxley, 1869 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
メガロサウルス科 (メガロサウルスか、Megalosauridae ) は、獣脚類メガロサウルス上科に属する肉食恐竜の単系統群の一つ。スピノサウルス科に近縁である。メガロサウルス、トルヴォサウルス、エウストレプトスポンディルス、アフロヴェナトルなどが内包される。ジュラ紀中期に出現し、最初に放散した大型肉食恐竜である。ジュラ紀の終わりと共に絶滅した[1]。彼らは基盤的テタヌラ類に近縁な原始的グループで、メガロサウルス亜科とアフロヴェナトル亜科という2つの亜科を内包するが、基盤的メガロサウルス類であるエウストレプトスポンディルスはどちらにも属さない[2]。
明確なメガロサウルス類としては、1824年にウィリアム・バックランドに記載されたイギリスオックスフォードシェアのメガロサウルス・バックランディー (Megalosaurus bucklandii) が初めて命名されたものである。メガロサウルスは記録上最初に命名・記載された恐竜類であり、恐竜類を設立する為の基準となった属種の一つである。ジュラ紀中期で最大の肉食動物でもあった[3]。メガロサウルス類は主にフランスやイギリスなどヨーロッパで発見された恐竜で構成される。しかし近年ニジェールで発見されたものもこのタクサに含まれている。メガロサウルス類はパンゲア超大陸がゴンドワナ大陸とローラシア大陸に分かれる前に出現したことがわかっている[4]。これにより、この大型獣脚類はジュラ紀の間、両方の大陸を支配していたのだろう[5]。
メガロサウルス科はトーマス・ハクスリーが1869年に最初に提唱したが、この分類群は歴史的には、断片的にしか知られていない恐竜や多くの不定の化石をぶちこむゴミ箱分類群として理解されている[6]。古生物学の黎明期、ほぼ全ての大型獣脚類が同科に分類され、48種がメガロサウリア (メガロサウルス科の前身) に内包されていた。その後、ほとんどのタクサは別のクレードに最分類され、整理されたメガロサウルス科はより狭く、意義のある分類群となった。しかしながら、メガロサウルス科を独自のグループと見なすべきかどうかについては議論が残っており、この科の恐竜はすべての恐竜種の中で最も問題の多い分類群のままである[5][6]。2005年のポール・セレノのような何人かの古生物学者は、その不安定な定義と明確な系統発生の欠如のためにメガロサウルス科の使用を拒否した。しかし、カラーノ (Carrano)、ベンソン (Benson)、およびサンプソン (Sampson) による最近の研究では、すべての基盤的テタヌラ類を体系的に分析し、メガロサウルス科が独自のタクサとして存在するべきであると判断された。
記載
[編集]体サイズ
[編集]他の多くのテタヌラ類のように、メガロサウルス類は二足歩行の動物食性の大型獣脚類だった。特にメガロサウルス科は巨大なものが多く見られ、いくつかのメンバーは1トン以上の体重になる。時間とともにこのタクサ内でのサイズ増大が起こったことが証明されている。ジュラ紀前期の基盤的メガロサウルス類はジュラ紀中期のものよりも小さな体をしていた。時間と共に大型化する事は、スピノサウルス科のような他の大型獣脚類にも同様に起こっていた[2]。このパターンはエドワード・コープが提唱したコープの法則に符合するものである[5][7]。
解剖学的特徴
[編集]メガロサウルス科の明確な共有派生形質は、長さと高さの比が3:1の低くて長い頭骨である。さらに、典型的な頭蓋は、他のテタヌラ類のものよりも装飾がはるかに少ない傾向があり、トサカまたは角は非常に小さいか、完全に欠けている。またメガロサウルス科の大腿骨の近位端は、前内側と完全内側の間に45度傾いている。メガロサウルス科は以下の明確な類型によって定義される[1][2]。
- 上腕骨の幹線に沿って約半分で終わる三角筋突起。
- 腓骨の前外側突起がない。
- 鼻孔が前上顎骨歯までのび、前上顎骨の鼻孔部分はその下よりも長く、先端に角度がある(前縁と歯槽縁の間の角度が70度以上)。
- 下顎骨関節突起に隣接する四辺形の内側孔。
- 仙椎の側方の窪み。
- 大腿骨近位端の後面の斜めの靭帯溝が浅い。
メガロサウルス亜科 (アフロヴェナトルよりもメガロサウルスに近縁な全てのメガロサウルス科) は、鼻腔の高さよりも低い前上顎の適度な(0.5-2.0)高さ/長さの比によって特徴付けられ、より低い比率を持つ。したがって背の低い鼻先を持つ他のメガロサウルス科と区別される。
アフロヴェナトル亜科 (メガロサウルスよりもアフロヴェナトルに近縁な全てのメガロサウルス科) は、前眼窩窓の四角い前縁と、正中線に沿って広く開いている恥骨によって特徴付けられる。
歯の形態
[編集]歯の視検は、さまざまな獣脚類を区別するため、およびさらに分類学的系統発生を調べるためによく使用される。歯の形態と歯の進化マーカーは、同形形質の傾向があり、時代を通じて消失および再出現する。しかし、メガロサウルス科の歯には、他の基盤的獣脚類と区別するいくつかの特定の定義がある。メガロサウルス科は、歯の峰や縁、またはセレーションの近くに複数のエナメルのしわを持つ。深い溝のあるエナメル質の表面も、メガロサウルス科の歯の特徴である。深い溝のある表面は初期のメガロサウルス科にあらわれるが、サイズが大きい派生的メガロサウルスほどその特徴が消え、時間の経過とともに失われたことを示唆する[8]。
分類
[編集]歴史的分類
[編集]このグループが設立された時から、多くの標本がメガロサウルス科として誤同定されてきた。例えば、メガロサウルス・バックランディの命名後1世紀の間に発見された大型獣脚類は全てメガロサウルス科に分類された[1]。最初に定義されたとき、メガロサウルス・バックランディは解剖学的に、イギリスのストーンズフィールド村周辺の採石場で見つかったさまざまな単離した骨に基づいていた。これらの初期の発見のいくつかには、適切に保存された歯を持つ右歯骨、肋骨、骨盤、および仙骨が含まれていた [9]。初期の古生物学者と研究者が周囲の地域でより多くの恐竜の骨を発見したとき、彼らはそれらすべてをメガロサウルスと同定した。なぜならその時点で、メガロサウルス・バックランディが唯一の命名・記載された恐竜だったからである。したがって、最初に記載された本種は、ほぼ無関係な特性の塊によって分類された[3]。
現代の古生物学では、20世紀初頭にまずメガロサウルス科の問題のある分類学的分離に取り組み始めた。肉食性獣脚類は全てメガロサウルス (属) に分類されていたが、フリードリヒ・フォン・ヒューネはそれを大型のものと小型のものに二分した。それぞれはコエルロサウリアおよびパキポドサウリアと命名された。のちに、ヒューネはパキポドサウリアを食性で二分し、肉食性のものを新グループカルノサウリアに配置した[2]。
基盤的獣脚類の形態学的特徴に関してより詳細な情報が知られて来ると、現代の古生物学者たちはこのグループ名の妥当性に疑問を持ち始めた。2005年、ポール・セレノはメガロサウルス科の研究初期の曖昧さからその使用を拒否し、トルヴォサウルス科を設立した [10] 。今日、メガロサウルス科は、ケラトサウルス類よりも派生したタクサを内包しているという事実のため、少なくとも基底的テタヌラ類のグループとして有効性が認められている[2]。そしてメガロサウルス科の名は国際命名規約の規定でトルヴォサウルス科に対して先取権があるため、このグループを表す物でなくてはならない[10]。
系統
[編集]メガロサウルス科は1869年に最初にハクスリーによって系統的に定義されたが、それでも長い間ゴミ箱分類群として使用され続けた。2002年、ロナン・アライン (Ronan Alain) はフランス北西部の完全なメガロサウルス類ポエキロプレウロンの発見後にこのクレードを再定義した。ポエキロプレウロンの研究で説明した特徴を使用して、アラインはメガロサウルス科を、現在ドゥブレウイロサウルス、トルヴォサウルス、アフロヴェナトルの共通祖先およびその全ての子孫と定義した。アラインはまた、メガロサウルス科内に2つのタクサを定義した。トルヴォサウルス亜科はメガロサウルス科の中でポエキロプレウロンとアフロヴェナトルよりもトルヴォサウルスに近縁なものとし、そしてメガロサウルス亜科はポエキロプレウロンにより近縁な全てのメガロサウルス科と定義された[3]。メガロサウルス科はまた、基盤的クレードであるメガロサウルス上科の下位分類群となった。メガロサウルス上科にはスピノサウルス科も含まれる。しかしながら、依然として多くのタクサは不安定な位置付けであり、確実に一つのクレードに配置することはできない。例えば、エウストレプトスポンディルスとストレプトスポンディルスはどちらもメガロサウルス科に分類されているが、彼らは特定のサブグループに定義されていないため、より安定したクラドグラムを作成するために除外されることがよくある[1][2]。以下のクラドグラムはベンソンら (2010) に基づく[11][12]。
メガロサウルス科 |
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そして2012年、サンプソンらはテタヌラ類のより包括的な解析を行い、メガロサウリアを定義した。メガロサウリアはメガロサウルスとスピノサウルスの最近共通祖先とその全ての子孫からなるクレードである。言い換えれば、メガロサウリアはメガロサウルス科とスピノサウルス科、二つのクレードを含む分類群となる。この新しいクラドグラムの中で、メガロサウルス科の中に、メガロサウルスよりもアフロヴェナトルに近縁な全てのメガロサウルス類からなるアフロヴェナトル亜科が設立された。
サンプソンらはまた、彼らの2012年の研究でクラドグラムから除外されていた様々なメガロサウルス類 (ドゥリアヴェナトル、ウィエヘンヴェナトル、マグノサウルス、レシャンサウルスそしてピヴェテアウサウルス) をアフロヴェナトル亜科に新たに含めた[2]。
メガロサウルス上科 |
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プロトフェザーを保存した小型獣脚類スキウルミムスが2012年に記載され、当初メガロサウルス上科の幼体と信じられた。この解釈はメガロサウルス類が羽毛を持っていた証拠とされた[13]。しかし、新たな分析結果ではスキウルミムスは基盤的コエルロサウリアに配置された[14]。
古環境・食性
[編集]メガロサウルス類は沿岸環境に生息する捕食動物あるいは腐肉食動物だった。ポルトガルのメイオス島で発見されたジュラ紀中期の足跡化石は、メガロサウルス類のものと信じられている。ジュラ紀中期の間、このサイトは入江の先に広がる浅い氾濫原だったと思われる。ほとんどの海岸の足跡化石が海岸線に平行に残されているのに対し、メイオス島の足跡化石の大半は海岸に垂直であり、動物は入江の方に向かっていた。この事は、潮が退くと、これらの足跡を残したメガロサウルス類が干潟に近づいたことを示唆する[15]。
この事実はメガロサウルス類が、潮の後退によって残された海洋生物の死体を捕らえた可能性があることを示している。別の可能性は、メガロサウルス類が魚を狩るために海岸に近づく魚食性だったということである。メガロサウルス科の姉妹群であるスピノサウルス科の多くは、魚食性および半水生生物に適応していたため、そのようなライフスタイルは系統発生データによって裏付けられる。サメの歯、軟骨の断片、胃石がポエキロプレウロンの胃内容物として記録されている。ポエキロプレウロンとドゥブレウイロサウルス両属はマングローブの根を保存した堆積物中で発見され、沿岸に生息していた更なる証拠を提供する。しかしこれは、メガロサウルス類が地上の獲物を食べていた可能性を排除するものではない[16]。例えば、メガロサウルス科に共通したナイフ状の歯は、ジュラ紀に本格的な多様化を始めた竜脚類を仕留めるのにうってつけだった[17]。
古地理学
[編集]メガロサウルス上科に含まれる種は全ての現在の大陸で見つかる。ローラシアとゴンドワナは比較的均等に超大陸から分割された。古地理学ではメガロサウルス科が主にジュラ紀中期に生息し、ジュラ紀から白亜紀になるまでに絶滅した事がわかっている[9]。
こうした大型肉食性獣脚類の全地球的な放散イベントは2度起こった。1回目は、パンゲアが分裂するジュラ紀前期 (約2億年前) よりも前にメガロサウルス類が放散した事である。テチス海が超大陸に侵食し、メガロサウルス類は真っ二つになった元パンゲアの両方に分散した。第二の放散イベントは、ジュラ紀中期と後期の間 (1億7400万 - 1億4500万年前) にアロサウルス上科とコエルロサウリアで起こった。 メガロサウルス類はこの時代の終わりと共に滅亡した[3]。
メガロサウルス類の化石は世界中の様々な地域の様々な年代の地層で発見されてきた。例えば、ポルトガルのチトニアン (1億5200万年前) の最も原始的な獣脚類の胚はメガロサウルス類のものである。更に、様々なメガロサウルス類の化石がイギリスとフランスのバジョシアンからカロヴィアン (1億6800万 - 1億6300万年前) やアフリカの1億7000万年前、中国のジュラ紀後期 (1億6300万 - 1億4500万年前)、そして北アメリカのチトニアン (1億5000万年前) で発見されている[9]。最近では、ニジェールのティオウラレン累層でメガロサウルス類が見つかり、これら基盤的テタヌラ類が世界的な放散を経験した事を再び証明した[5]。
出典
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