リビア国民軍

ウィキペディアから無料の百科事典

リビア国民軍(リビアこくみんぐん)は、リビア国内に展開する反政府武装組織。略称LNA。実質的にはリビア軍陸軍および空軍英語版組織が、暫定政府に敵対する形で形成された組織ともいえる。

リビア国民軍
الجيش الوطني العربي الليبي
公式会議で使用される旗[1]
活動期間 2014-
国籍 リビアの旗 リビア
兵力 80,000
基地 トブルク
主な戦歴 リビアでの派閥紛争 (2011年-2014年)英語版
2014年リビア内戦
2023年スーダン戦争
指揮
司令官 ハリファ・ハフタル
テンプレートを表示

概要

[編集]

創設

[編集]

2011年リビア内戦に参画し、リビア陸軍の将校であったハリファ・ハフタルが、2014年リビア内戦時に、暫定政府側の国民議会に反旗を翻す形で創設。リビア東部のベンガジを拠点として、国民合意政府英語版(GNA)とイスラム原理主義者が組織する民兵組織と対抗[2]エジプトUAEサウジアラビアロシアフランスなどの支援を受けながら勢力を拡大[3]。2019年初頭には、リビア南部の油田地帯の掌握に成功した[4]

国民合意政府との内戦

[編集]

2019年4月5日、ハリファ・ハフタルは、国際連合の支持を取り付けていた国民合意政府が拠点とするトリポリへの進軍を宣言[5]。国連やアメリカ合衆国の警告を無視する形で、激しい戦闘を繰り広げた。同月7日には、リビア国民軍側が政府側の拠点を空爆[6]。同月12日には、トリポリから20kmの地点まで進軍。トリポリからは約8000人の市民が戦乱を避けるために避難した[7]

2019年4月18日国際連合安全保障理事会は、イギリスが提出したリビア停戦決議案の採決を行ったが、ロシアとアメリカが反対したことから否決された[8]

2019年4月にガリヤンを制圧したものの、6月26日に国民合意政府軍に再奪取される。リビア国民軍側は、背後にトルコの支援があったとして批難した[9]。なお、リビア国民軍側の基地からは、アラブ首長国連邦の国名が記された中国製のレーザー誘導砲弾やフランスが購入した対戦車ミサイルジャベリン)が発見され、国民合意政府軍により公開されている[10]

2020年1月、リビア国民軍を支援するアラブ首長国連邦の中国製無人攻撃機である翼竜IIがリビアの首都トリポリの陸軍士官学校を空爆して26人の士官候補生を殺害したとされる。このドローンはアラブ首長国連邦の基地があるリビアのアルカディムから運用されていた[11]

2020年5月、アメリカアフリカ軍は、リビア国民軍を支援する民間軍事会社ワグネル・グループ)を支援するためにロシアがMiG-29 (航空機)Su-35 (航空機)を派遣していることを指摘した[12]

国民合意政府との内戦が泥沼化する中、リビア国民軍を支援するエジプトは2020年6月8日、双方に停戦を提案。加勢するロシアは支持し、欧米も即時停戦を訴えたが、国民合意政府を軍事的に支えるトルコは反対し、結局停戦は実現しなかった[13]。しかし8月21日、国民合意政府との停戦で合意し、近いうちに選挙を実施すると発表した[14]

脚注

[編集]
  1. ^ Haftar agrees to Libya ceasefire ahead of Berlin talks”. Middle East Online (16 January 2020). 7 January 2020閲覧。
  2. ^ 「リビア国民軍」、過激派との戦闘で6月に民兵44人死亡”. AFP (2017年7月2日). 2019年4月13日閲覧。
  3. ^ リビアのエネルギーをめぐる政治動向: 産油量回復の一方で高まる治安リスク” (PDF). 日本エネルギー研究所. 2019年4月13日閲覧。
  4. ^ リビア内戦が激化、東部拠点の武装組織が首都空港を爆撃”. ロイター (2019年4月9日). 2019年4月13日閲覧。
  5. ^ リビア、民兵組織率いるハフタル氏が首都への「進軍」命令”. AFP (2019年4月5日). 2019年4月13日閲覧。
  6. ^ リビア、民兵組織が空爆開始 統一政府も反攻を宣言”. AFP (2019年4月7日). 2019年4月13日閲覧。
  7. ^ リビア首都争奪戦続く、数十人死亡 8000人避難”. AFP (2019年4月13日). 2019年4月13日閲覧。
  8. ^ トランプ大統領、リビアのハフタル氏と電話会談、米国はリビア国民軍支持か”. AFP (2019年4月20日). 2019年5月9日閲覧。
  9. ^ リビア国民軍率いるハフタル氏、領海内のトルコ船舶の攻撃を命令”. AFP (2019年6月29日). 2019年8月10日閲覧。
  10. ^ リビアの親ハフタル派基地で発見のミサイル、仏が自国所有を認める”. AFP (2019年7月11日). 2019年8月10日閲覧。
  11. ^ UAE implicated in lethal drone strike in Libya”. BBC News. 2020年12月2日閲覧。
  12. ^ 「ロシアがリビアへ派遣した戦闘機の写真」、米アフリカ軍が公開”. AFP (2020年5月27日). 2020年5月26日閲覧。
  13. ^ “リビア、停戦協議を再開 国連「建設的」”. 時事ドットコム. 時事通信. (2020年6月11日). https://web.archive.org/web/20200611121751/https://www.jiji.com/jc/article?k=2020061101148&g=int 2020年9月18日閲覧。 
  14. ^ “リビア停戦合意、和平への「困難な道」の第一歩”. AFPBB News. フランス通信社. (2020年8月26日). https://www.afpbb.com/articles/-/3301075 2020年9月18日閲覧。