中村格
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中村 格 なかむら いたる | |
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生年月日 | 1963年7月4日(61歳) |
出生地 | 日本 福岡県福岡市 |
出身校 | 東京大学法学部卒業 |
前職 | 警察庁長官 |
称号 | 法学士 |
第29代 警察庁長官 | |
在任期間 | 2021年9月22日 - 2022年8月30日 |
国家公安委員会委員長 | 棚橋泰文 二之湯智 谷公一 |
在任期間 | 2020年1月17日 - 2021年9月22日 |
在任期間 | 2018年9月14日 - 2020年1月17日 |
在任期間 | 2017年8月10日 - 2018年9月14日 |
在任期間 | 2016年8月22日 - 2017年8月10日 |
中村 格(なかむら いたる、1963年7月4日 - )は、日本の警察官僚。第29代警察庁長官。
来歴
[編集]福岡県出身[1]。私立ラ・サール高校[1]、東京大学法学部卒業[2]。1986年、警察庁入庁[3]。1989年に和歌山県警察本部捜査第二課長、1992年に千葉県警察本部捜査第二課長、1993年に警察庁刑事局捜査第二課課長補佐。1997年からは、在タイ日本国大使館一等書記官として3年間、外務省に出向した。
帰国後、警察庁に戻り、警察庁交通局運転免許課理事官や刑事局捜査第二課理事官を経て、2003年9月から2005年8月まで警視庁刑事部捜査第二課長[4][5][6]。警視庁捜査第二課長時代には、元衆議院事務局電気施設課長による収賄事件などの贈収賄事件を検挙した。
その後は警察庁長官官房付となり[5]、警察庁会計課会計企画官、警視庁警務部参事官を経て[7]、民主党の菅直人政権では、2010年に内閣官房長官の仙谷由人の秘書官となり[8]、その後の政権交代を経て、2012年12月からは内閣官房長官の菅義偉の秘書官となり、重用された[3][9]。2015年3月から2016年8月まで警視庁刑事部長[3]。警察庁に戻り、2016年8月より組織犯罪対策部長兼生活安全局付兼刑事局付兼官房付[10]を経て、2017年8月10日から総括審議官兼警備局付[10]。2018年9月14日より警察庁長官官房長[11]。2020年1月17日より警察庁次長[12]。
2022年7月8日、元内閣総理大臣の安倍晋三が奈良市で銃撃され死亡する事件が起こる。同年8月25日、銃撃事件を受けて中村は警察庁長官の辞職願を提出し、26日の閣議承認を経て、30日付で警備局長の櫻澤健一、奈良県警察本部長の鬼塚友章らとともに引責辞職した[14][15][16]。
同年コスモス薬品顧問[17]。2023年2月1日、日本生命保険特別顧問に就任[18]。
不祥事
[編集]性犯罪事件の隠蔽疑惑
[編集]2015年4月3日、ジャーナリストの山口敬之が伊藤詩織に対して性的暴行を加える事件が発生した。高輪警察署が逮捕状の発付を受けたが、執行直前に山口の逮捕が取り止めとなった[19][3]。山口は「誰よりも政権中枢を取材してきた」と自称しており、元首相の安倍晋三に最も近いジャーナリストとされる[20][3]。そのため、当時刑事部長だった中村が忖度し、事件の隠蔽を指示したのではないかと取り沙汰された[3]。その後、東京地検は2016年7月22日、嫌疑不十分として山口を不起訴処分とした。この一連の疑惑について中村は、安倍政権による政治介入は否定した上で、自身が最終判断を行い「私が決裁した」と認めている[3][21]。
2021年9月22日、警察庁長官の就任会見で、記者から、中村の指示で逮捕状の執行を見送ったとされることについて問われると、「法と証拠に基づき組織として捜査を尽くした。捜査指揮では常に法と証拠に基づいて適切に判断してきたと考えている」「法と証拠以外の他事を考慮して、何らかの捜査上の判断をしたということは一度もない」と答え、「法と証拠」のみに依って職務を遂行していると強調した[22][23]。
伊藤詩織は2017年9月28日に「望まない性行為で精神的苦痛を受けた」として山口に対して1,100万円の損害賠償を求める民事訴訟の訴状を提出した。
一審東京地裁は伊藤の請求を認めて330万円の支払いを山口に命じ、控訴審でも認められ、上告も棄却され「望まない性行為」と認めた判決は確定している。
安倍晋三銃撃事件での警護体制不備
[編集]2022年7月8日に奈良市で安倍晋三銃撃事件が発生した際、警護体制の問題点が多く指摘された[24]。翌9日には奈良県警察本部長の鬼塚友章が会見し、謝罪した[25]。フランスのフィガロ紙は同月10日、事件に関する記事で「権力に近いレイプ犯の起訴を止めたことで有名な中村格氏が、日本の警察のトップを務めている」と書き記した[26]。
同年7月12日、中村は国家公安委員長の二之湯智とともに記者会見を開き、「このような重大な結果を招いたことを踏まえれば、現場の対応のみならず警察庁の関与の在り方にも問題があったものと認識しており、都道府県警察を指揮監督する立場である警察庁長官としての責任は誠に重いと考えている」と述べ、自身の進退についての明言は避けた[27]。
同年8月25日、記者会見を開き、安倍晋三銃撃事件の責任を取り、警察庁長官を辞職する意向を明らかにした。警察庁長官が個別の事件で引責辞職することは極めて異例のことで、過去にほぼ例がなく、首相経験者が銃撃され死亡するという重大な結果を重く見たとみられる[28][29]。30日付で警備局長の櫻澤健一、奈良県警察本部長の鬼塚友章ともに辞職[30]。
脚注
[編集]- ^ a b “毎日フォーラム・霞が関ふるさと記 福岡県(上)”. 毎日新聞. (2018年1月10日) 2018年3月26日閲覧。
- ^ “中村格(警察庁組織犯罪対策部長) - 選択出版”. 選択出版. 2020年7月30日閲覧。
- ^ a b c d e f g “官邸お抱え記者「山口敬之」、直前で“準強姦”逮捕取りやめに 警視庁刑事部長が指示”. 週刊新潮. (2017年5月18日) 2017年12月3日閲覧。
- ^ “警視庁人事=9月2日”. 読売新聞・東京朝刊・都民: p. 31. (2003年8月27日). "捜査二課長(警察庁捜査二課理事官)中村格=警視正" - ヨミダス歴史館にて閲覧
- ^ a b “警視庁人事=8月3日”. 読売新聞・東京朝刊・都民2: p. 30. (2005年7月23日). "警察庁長官官房付(捜2課長)中村格" - ヨミダス歴史館にて閲覧
- ^ 中村格-警察庁長官官房長の略歴書(令和2年1月10日現在)弁護士山中理司サイト
- ^ “調布署巡査部長を収賄容疑で逮捕 風俗店主は贈賄容疑/警視庁”. 読売新聞・東京朝刊: p. 27. "中村格警務部参事官は、「警察官として言語道断の行為。深くおわびしたい」とコメントした。" - ヨミダス歴史館にて閲覧
- ^ “チーム仙谷フル回転、多彩な秘書官・ブレーン(永田町インサイド)”. 日本経済新聞・夕刊: p. 6. (2010年11月18日). "外交から経済政策まで幅広く担い、「影の総理」とも呼ばれる仙谷由人官房長官。その働きを支えているのが「チーム仙谷」と呼ばれる側近集団だ。...「仙谷長官と秘書官たちの結束が固い。まさに『チーム仙谷』だ」。最近、首相官邸内では羨望(せんぼう)とも警戒ともとれる声があちこちで聞かれる。...警察庁出身の中村格氏らが加わった。" - 日経テレコン21にて閲覧
- ^ “手放せない2人”. 日本経済新聞・朝刊: p. 4. (2013年6月22日). "それぞれ警察庁と外務省から派遣された中村格、市川恵一両秘書官 ... 6人いる事務の秘書官の中でも2人が特別なのは、民主党政権の時代から首相官邸で働く数少ない官僚だからだ。... 2人は「危機管理」と「歴史認識」の担当だ。「この2つへの対応が政権の命運を左右する」。菅氏はしばしば周囲にこう漏らす。" - 日経テレコン21にて閲覧
- ^ a b “人事 警察庁”. 毎日新聞. (2017年8月4日) 2017年12月3日閲覧。
- ^ “警視総監に三浦氏”. 日本経済新聞 (2018年9月7日). 2019年2月28日閲覧。
- ^ “警察庁長官に松本次長 警視総監は斉藤副総監”. JIJI.COM. (2020年1月14日) 2020年7月30日閲覧。
- ^ 警察庁長官に中村格氏、警視総監に大石吉彦氏が就任へ 閣議で承認朝日新聞デジタル2021年9月14日 11時00分
- ^ 『官報』第812号9頁 令和4年9月6日
- ^ 中村格警察庁長官の辞職、閣議で承認 30日に交代へ日本経済新聞2022年8月26日 10:20
- ^ “中村格氏が警察庁長官を退任「二度と惨劇が繰り返されないようにすることが安倍元首相への償い」”. 日刊スポーツ (2022年8月30日). 2022年8月30日閲覧。
- ^ 国家公務員法第106条の25第1項等の規定に基づく報告の概要(令和4年10月1日〜同年12月31日分) 人事院 令和5年3月24日(PDF)
- ^ 前警察庁長官、日生特別顧問に 中村氏、安倍元首相銃撃で辞任 時事通信2023年2月3日 9時21分
- ^ あの夜何があったのか――「山口敬之」準強姦逮捕状が握り潰されるまでを改めて振り返る週刊新潮2019年12月19日
- ^ “元TBS記者、発表2時間半前に「安倍晋三元首相がお亡くなりに」 批判に反論「二重三重の確認を取った」”. J-CAST ニュース. (2022年7月8日) 2022年7月27日閲覧。
- ^ “中村格警察庁長官は退職金ガッポリ8000万円 安倍氏銃撃事件の引責で辞職も「処分なし」|日刊ゲンダイDIGITAL”. 日刊ゲンダイDIGITAL. 2022年9月13日閲覧。
- ^ “【動画】中村格警察庁長官が就任会見 伊藤詩織さん巡る対応問われ「法と証拠に基づき」と繰り返す”. 東京新聞. (2021年9月22日) 2022年7月14日閲覧。
- ^ 田内康介、吉田伸八 (2021年9月22日). “伊藤詩織さんが訴えた事件、なぜ逮捕見送り 警察庁長官との一問一答”. 朝日新聞 2022年7月14日閲覧。
- ^ “安倍元首相銃撃 “1回目発射まで9秒ほど この間の対応検証へ””. NHK (2022年7月12日). 2022年7月13日閲覧。
- ^ 川畑さおり、清水晃平 (2022年7月9日). “奈良県警本部長「警護・警備に問題、否定できない」 安倍元首相銃撃”. 2022年7月14日閲覧。
- ^ Arnaud, Régis (2022年7月10日). “Assassinat de Shinzo Abe: le tueur voulait se venger d’une secte promue par l’ex-premier ministre” (フランス語). Figaro 2022年7月14日閲覧。
- ^ “安倍元首相銃撃 警察庁長官「ざんきに堪えない」 進退明言せず”. NHK (2022年7月12日). 2022年7月21日閲覧。
- ^ “過去にも警察トップ引責 不祥事で懲戒、有罪判決も”. 産経新聞 (2022年8月25日). 2022年8月25日閲覧。
- ^ 吉田伸八 (2022年8月25日). “中村格・警察庁長官の引責辞任、国家公安委が示した懸念とは”. 朝日新聞. 2022年8月25日閲覧。
- ^ 中村警察庁長官が退任、新長官に次長の露木氏産経新聞2022/8/26 10:43
官職 | ||
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先代 松本光弘 | 警察庁長官 2021年 - 2022年 | 次代 露木康浩 |
先代 松本光弘 | 警察庁次長 2020年 - 2021年 | 次代 露木康浩 |
先代 松本光弘 | 警察庁長官官房長 2018年 - 2020年 | 次代 露木康浩 |
先代 斉藤実 | 警察庁長官官房総括審議官 2017年 - 2018年 | 次代 藤本隆史 |