巨大仏

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エンゲルベルト・ケンペルによる方広寺大仏(京の大仏)のスケッチ[1]豊臣秀吉が方広寺大仏を発願し、その後相次ぐ天災のため損壊と再建が繰り返されたが、それらの大仏は文献記録によれば、6丈3尺(約19m)とされ、東大寺大仏の高さ(14.7m)を上回り、大仏としては日本一の高さを誇っていた。

巨大仏(きょだいぶつ)は、大きな仏像を指す「大仏」のなかでも特に大きなものを指す日本語の表現である。もともとは、バーミヤンの石仏などに言及する場合などに用いることがあったが[2][3]、特に、20世紀に日本各地で建造された屋外の巨大建築物としての仏像類について、この表現で言及することがある[4]。本項目では、この限定された意味での用例について述べる。

どのくらいの大きさの仏像を「巨大仏」とするかという明確な基準は特にないが、ランドマーク研究者で巨大観音像を研究している高崎経済大学名誉教授の津川康雄[5]は『宗教的ランドマークとその要件 -大観音像を例として-』において25m以上を基準としている[6]宮田珠己は『晴れた日には巨大仏を見に』において「厳密な理由はないが、ウルトラマンよりデカいというのが一応の目安だ」とし、40m以上のものを対象とする旨を述べている[7]。この基準によって宮田が取り上げた巨大仏は、(厳密には仏像ではない親鸞聖人大立像を含め)14件であった[8]。そのうち恵山釈迦涅槃像は後に札幌に移設されて佛願寺大涅槃像となっている。

一覧[編集]

名称[9] 寺院名/施設名 所在地 像の種類 姿勢 高さ[10] 竣工 画像
牛久大仏
(牛久阿弥陀大佛)
牛久浄苑[11] 茨城県牛久市 阿弥陀如来 立像 120.0m 1993年
仙台大観音
(仙台天道白衣大観音)
大観密寺 宮城県仙台市泉区 白衣観音 立像 100.0m 1991年
世界平和大観音像 平和観音寺
(非宗教法人:閉館)
兵庫県淡路市 立像 100.0m 1991年
2022年(解体済み)
北海道大観音 天徳育成会
(旧北の京・芦別[12]
北海道芦別市 立像 88.0m 1989年
加賀大観音 観音院加賀寺(レジャー施設[13] 石川県加賀市 立像 73.0m 1988年
小豆島大観音 小豆島大観音佛歯寺
(通称)仏歯寺
香川県小豆郡土庄町 聖観音 立像 非公表[14]
(68m ?)
1994年
久留米大観音
(救世慈母大観音)
大本山成田山久留米分院 福岡県久留米市 立像 62.0m 1982年
会津慈母大観音 会津村(法國寺[15]会津別院)
(宗教法人運営のレジャー施設)
福島県会津若松市 立像 57.0m 1987年
東京湾観音 東京湾観音教会 千葉県富津市 立像 56.0m 1961年
うさみ大観音
(世界平和大観音)
うさみ観音寺[16] 静岡県伊東市 坐像 50.0m 1982年
釜石大観音 釜石大観音[17] 岩手県釜石市 魚籃観音 立像 48.5m 1970年
高崎白衣大観音 高野山真言宗慈眼院 群馬県高崎市 立像 41.8m 1936年
七つ釜聖観音 長崎西海楽園(2007年閉鎖) 長崎県西海市 立像 40.0m 1990年 福岡に移設
親鸞聖人大立像 西方の湯 新潟県胎内市 狭義の仏像ではない 立像 40.0m 1990年
佛願寺大涅槃像
(旧・恵山釈迦涅槃像)
舎利山佛願寺大涅槃聖堂 北海道札幌市南区 涅槃像 全長45m 2005年
(移設)
恵山釈迦涅槃像 恵山モンテローザ(1998年閉鎖) 北海道函館市 涅槃像 11m
全長45m[18]
1988年
〜2003年[19]
篠栗釈迦涅槃像[20] 南蔵院 福岡県糟屋郡篠栗町 涅槃像 11.0m
全長41m
1995年

脚注[編集]

  1. ^ ベアトリス・M・ボダルト=ベイリー『ケンペルと徳川綱吉 ドイツ人医師と将軍との交流』中央公論社 1994年 p.95
  2. ^ 樋口隆康「バーミヤーン--アフガニスタンの巨大仏像」『歴史と旅』第26巻第17号、1999年、80-87頁。 
  3. ^ “アフガン遺跡に光 龍谷大、共同調査協定書に調印”. 朝日新聞・朝刊: p. 37. (2005年2月26日). "共同で調査するのは、8世紀以前に建てられた同州ケリガンの仏教寺院跡とチル・ボルジの城跡。タリバーンに巨大仏が破壊されたバーミヤン遺跡の西120キロにある。"  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  4. ^ この意味での「巨大仏」を主題にした書籍として、宮田珠己『晴れた日には巨大仏を見に』(2004年)、中野俊成『巨大仏!!』(2010年)がある。
  5. ^ 日本放送協会 (2023年7月16日). “バブル期の“巨大観音像” いま何が…加賀や高崎などを徹底取材 | NHK | WEB特集”. NHKニュース. 2023年7月16日閲覧。
  6. ^ 宗教的ランドマークとその要件 -大観音像を例として-
  7. ^ 宮田,2004,p.11.
  8. ^ 宮田,2004,p.293.
  9. ^ 名称は通称を優先し、正式名称などを括弧書きとする。
  10. ^ 像高ではなく、台座などを含めた高さである。
  11. ^ 浄土真宗東本願寺派の霊園。
  12. ^ 1970年に「芦別レジャーランド」として開設、1988年に「北の京・芦別」と改称し、翌1989年に北海道大観音が建立された。2012年にライフステージホテル天都と改称したが、2013年から宗教法人天徳育成会の所有となる
  13. ^ 開設した当初の施設名は「ユートピア加賀の郷」。
  14. ^ 高さは「およそ60m」、ないし「68m」などとして言及されることが多い。宮田(2004,p.293)は「108.0m」としているが誤記と思われる。
  15. ^ 法國寺 関内陵苑”. 法國寺 関内陵苑. 2012年11月14日閲覧。 “宗教法人「法國寺」は、横浜市緑区鴨居の弾誓上人創建の寺院です。横浜市関内の【関内陵苑】は、別院です。”
  16. ^ うさみ観音寺”. うさみ観音寺. 2012年11月14日閲覧。
  17. ^ 曹洞宗明峰山石応禅寺によって設置されている。釜石大観音 概要”. 釜石大観音. 2012年11月14日閲覧。 “昭和45年4月に釜石市内の施主明峰山石応禅寺(曹洞宗)によって大平町鎌崎半島に建立されました。”
  18. ^ “「ねはん像」の扱いに苦慮 休業中の観光施設 恵山町”. 朝日新聞・朝刊・北海道: p. 26. (2001年1月13日)  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  19. ^ “ねはん像、引っ越し準備始まる 恵山町で解体作業”. 朝日新聞・朝刊・北海道: p. 28. (2003年11月16日)  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  20. ^ 地元では「ねぼとけさん」とも呼ばれる。ねぼとけさん、極楽ごくらく 福岡で「御身拭い」朝日新聞DIGITAL(2017年12月26日)

参考文献[編集]