第二次ソフィスト

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ヘロデス・アッティコス、代表的な第二次ソフィスト[1]

第二次ソフィスト（だいにじソフィスト）は、ローマ帝国期のギリシア語圏で活動した知識人集団。第二次ソフィスト思潮[2]、第二次ソフィスト運動[3]、第二ソフィスト時代[4]、第二のソフィスト術[5]（英: Second Sophistic[2], 独: Zweite Sophistik）などともいう。

明確な範囲は決まっていないが、主にピロストラトス『ソフィスト列伝』[6]に挙げられるところの、アッティカ方言を駆使する、1世紀から3世紀の弁論家を中核とする[7]。古典期ギリシアの本来の「ソフィスト」と異なり、蔑称の意味合いは薄く、哲学者を兼ねる人物も含まれる[8][9]。

主な人物に、ディオン・クリュソストモス[7][10][11]、パボリノス[10]、ヘロデス・アッティコス[10][1]、アエリウス・アリステイデス（英語版）[7][3][10][11]、ラオディケイア（またはスミュルナ）のポレモン（英語版）[10]、アプレイウス[8][9]、ピロストラトス[11]、リバニオス[4]らがいる。ルキアノスは第二次ソフィストに属しながら[1][4][11]、『弁論教師』『レクシパネース』などで第二次ソフィストを風刺した[4][10]。

時代背景として、ネロやハドリアヌス、プルタルコスらも関与したローマ帝国期のギリシア文化復興運動（ギリシア・ルネサンス）があった[12][10]。出身地は様々だが、活動地はアテナイ、スミュルナ、エフェソスの三都市が主だった[10]。皇帝やローマ人エリートと交流し、政治に影響を与える者もいた[10]。

第二次ソフィストの弁論は、古典期のような法廷弁論・議会弁論よりも、ショーとしての模擬弁論（デクラマティオ（英語版））が主流だった[1][12]。弁論の文体は、「アッティカ主義（英語版）」すなわちアッティカ方言の擬古的で簡潔典雅な文体と、「アジア主義（英語版）」すなわちヘレニズム期小アジア風の装飾過多な文体が、対立しつつ混在していた[5][10]。

近現代の西洋古典学では、1876年ドイツのエルヴィン・ローデ（英語版）によって初めて取り上げられ[5]、1960年代末アメリカのグレン・バワーソックによって主題的な研究対象とみなされ始め[12]、2000年代頃から欧米で積極的に研究されるようになった[7]。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 桜井万里子；本村凌二『集中講義！ ギリシア・ローマ』筑摩書房〈ちくま新書〉、2017年。ISBN 978-4480071026。114ff頁。
  2. ^ a b 勝又泰洋. “『『英雄伝』の挑戦』に寄せた論考への補足”. 2023年3月4日閲覧。
  3. ^ a b 増永理考 (2022年). “ローマ帝政前期のギリシア人による言論空間の形成をめぐる研究　増永　理考　これまでの助成先　研究助成　サントリー文化財団”. www.suntory.co.jp. 2023年3月4日閲覧。
  4. ^ a b c d 高津春繁『ギリシア・ローマの文学』講談社〈講談社学術文庫〉、2023年（原著1967年）。ISBN 9784065304570。 252-254頁。
  5. ^ a b c 堀尾耕一「哲学的弁論術と第二のソフィスト術 (PDF) 」『ギリシャ哲学セミナー論集』Vol. XI、ギリシャ哲学セミナー、2014年。4頁
  6. ^ ピロストラトス、エウナピオス『哲学者・ソフィスト列伝』戸塚七郎、金子佳司 訳、京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2001年。ISBN 978-4876981311。 （戸塚七郎 解説 / 納富信留 月報「ソフィストをめぐる哲学史の屈折」）
  7. ^ a b c d 勝又泰洋 (2017年). “研究ノート 「第二次ソフィスト運動」の知識人たちとの対話”. 日本西洋古典学会. 2020年8月26日閲覧。
  8. ^ a b 本間俊行 (2015年). “研究ブログ 哲学者とソフィストのステレオタイプ”. researchmap. 2020年8月30日閲覧。
  9. ^ a b 小島和男「アプレイウスにとっての哲学とは何か?」『学習院大学文学部研究年報』第64巻、2017年。 
  10. ^ a b c d e f g h i j 南川高志 著「ローマ帝国とギリシア文化」、藤縄謙三 編『ギリシア文化の遺産』南窓社、1993年。ISBN 4816501142。 88-93頁。
  11. ^ a b c d 近藤智彦 著「ローマに入った哲学」、伊藤邦武；山内志朗；中島隆博；納富信留 編『世界哲学史 2』筑摩書房〈ちくま新書〉、2020年。ISBN 9784480072924。 44頁。
  12. ^ a b c 桑山由文「元首政期ローマ帝国とギリシア知識人」『史窓』第065巻、京都女子大学史学会、2008年2月、19-20頁、CRID 1050564287529665664、hdl:11173/758、ISSN 0386-8931。 
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