鎖骨

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骨: 鎖骨
ヒトの鎖骨
名称
日本語 鎖骨
英語 clavicle
ラテン語 Clavicula
関連構造
上位構造 肩帯
画像
アナトモグラフィー 三次元CG
関連情報
MeSH Clavicle
グレイ解剖学 書籍中の説明(英語)
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鎖骨(さこつ)は、四肢動物肩帯を構成する骨の一つ。

ヒトの鎖骨[編集]

鎖骨の位置(赤い部分)

ヒトの鎖骨は、胸骨肩甲骨を連結する事で肩構造を支持し、また各種筋肉の起始基盤として機能する。ウマイヌウシゾウの様な走行性の哺乳類等では退化している場合も多い。鎖骨がないといわゆる抱きつく所作(前脚を内側に曲げ保持すること)が困難で鎖骨のない動物は木登りができないことから、早期に草原に進出した動物は長距離移動に適応して鎖骨が退化し、長期間森林に生息した動物には鎖骨が残っているのではないかと考えられている。鳥類では左右の鎖骨が癒合し、暢思骨または叉骨と呼ばれる。

ヒトの鎖骨は、人体の中で最も折れ易い骨であり、肩に加わる衝撃を吸収するための、クラッシャブルゾーンの役割を果たしている。こうした特徴に着目し、3点式や4点式のシートベルト命綱などが開発されている。

鎖骨と関節する骨[編集]

内側端で胸骨と関節し[1]胸鎖関節をなし、外側端で肩甲骨と関節し[1]肩鎖関節をなす。

鎖骨から起始する筋肉[編集]

鎖骨に停止する筋肉[編集]

語源[編集]

ラテン語名claviculaは、clavis(「鍵」)の指小形で、「小さな鍵」の意味。

古くは「鎖骨」とは、菩薩の身体にあると言われる鎖状(あるいは蔓状)に繋がった(架空の)骨を指し、仏でいう舎利に相当する聖遺物であり[6][7]、高僧への賛辞にも用いた[8]

漢方典籍では主に「血盆骨」の名が用いられ、『解体新書』では前野良沢(翻訳係)と杉田玄白(清書係)もこの語を当てたが、『重訂解体新書』では大槻玄沢が訳し直し「鎖骨」の語を当てている[9]。 この鎖骨は血盆骨の別名の一つで、古くは1247年に出版された法医学書洗冤集録に使用が見られる[10]。他に「鎖子骨」「𩩓子骨[11]」「缺盆骨(欠盆骨)」「拄骨」「巨骨」とも書く。鎖骨内側の窪みを「缺盆」と言う。鎖骨外端の経穴巨骨穴と言う。

近年では、「鎖骨」という名称は、昔の中国で囚人を捕らえておくために、この骨の後ろに穴をあけて鎖をとおしたことに由来するなどと主張する者もいる[12]

脚注[編集]

  1. ^ a b 森ら, p.124
  2. ^ 森ら, p.297
  3. ^ 森ら, p.334
  4. ^ a b 森ら, p.309
  5. ^ 森ら, p.265
  6. ^ 白川静字通』「鎖」→熟語:鎖骨
  7. ^ 張読 (唐)宣室志』(唐代)「夫鎖骨運絡如蔓,故動搖之,体則有清越之聲,固其然矣。昔聞佛氏書言,佛身有舍利骨,菩薩之身有鎖骨」
  8. ^ 蘇軾『書黁公詩后』「霜顱隱白毫、鎖骨埋青玉」
  9. ^ 『全体新論』と『解体新書』の漢字医学術語について
  10. ^ 洗冤集錄 : 二十四、殺傷 - 中國哲學書電子化計劃
  11. ^ 醫宗金鑒
  12. ^ ブルーバックスB-1537「退化」の進化学 犬塚則久 2007年 講談社 ISBN 4-06-257537-X 63ページ

参考文献[編集]

  • 原著 森於菟 改訂 森富「骨学」『分担 解剖学1』(第11版第20刷)金原出版、東京都文京区、2000年11月20日、19-172頁。ISBN 978-4-307-00341-4 
    • 原著 森於菟 改訂 森富「骨学」『分担解剖学1』、19-172頁。 
    • 原著 森於菟 改訂 大内弘「筋学」『分担解剖学1』、249-437頁。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]