難民キャンプ

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2005年、チャドの難民キャンプ

難民キャンプ(なんみんキャンプ、: Refugee camp)は、難民が集中して避難、居住する場所(キャンプ地)のこと。

概要[編集]

戦争内乱自然災害伝染病の災難を避けるため、居住地を捨て、母国の国境を越えて難民となった者が集まり、居住することで発生する。初期段階または国際的に注目を浴びない地域では、自然発生的なキャンプとなるが、一般にはキャンプ地発生国やNGO政府間組織国際赤十字などが、居住環境やインフラ整備などの便宜を図り、居住環境が充実していくこともある。

パレスチナ難民の例のように、紛争や戦争が固定化すると数十年も存続する例もあり、定住民(現地民)との定義が曖昧になったり、元々住んでた人々と軋轢が起きることもある。

キャンプの設計[編集]

一般に難民キャンプは、その外見や快適性を極端に切り詰めて設計される、もしくは成り行きにまかせたまま形成されるため、人間の基本的なニーズの最低限のレベルをようやく充足させる程度のものでしかない。

難民となる原因となった内乱が終結した時には、直ちに故郷に難民が帰還することを前提として、短期間かつ最小限のニーズに合わせた住環境が整えられていく。この過程で、快適性や充実感の水準設定が国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)を始めとした、支援団体内で議論となることがある。

これは、収容者のキャンプへの依存の高まりから、労働を忌避する傾向が生じること、また、祖国へ帰還する意欲を失うことにつながるためである。

居住上の問題点[編集]

支援が受けられないキャンプでは飢餓が発生するほか、支援があったとしても公衆衛生の改善は後回しになることが多いため、コレラなどの伝染病が蔓延することもある。

避難民自体が祖国を捨てた反政府主義者と見なされることから、軍事組織などから越境攻撃を受ける例もある。ダルフール紛争では、難民キャンプ地が襲撃され多数の死傷者を出している。

短期的に最低限の安全や衣食住が確保されても、長期的にみればキャンプ地での不安定な環境から精神に障害が出る可能性も高く、キャンプで産まれた子どもたちが成長する過程精神発達に支障が出る恐れも考えられている。

設備[編集]

難民キャンプには、次のようなものが備わっていることが望ましいが、地政学上の問題や宗教の違いなどにより民間支援に多寡が生じることから、全てのキャンプの水準が一定であることはない。

大規模な難民キャンプが生じた戦争、内乱[編集]

数十万人規模の難民が難民キャンプを形成した事例

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • いとうせいこう『「国境なき医師団」を見に行く』講談社、2017年11月。ISBN 978-4062208413 
  • 中坪央暁『ロヒンギャ難民100万人の衝撃』めこん、2019年9月。ISBN 978-4839603175 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]