98NOTE

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PC9821 Nb10

98NOTE(きゅうはちノート)とは、かつて日本電気が発売していたPC-9800シリーズノートパソコン。ラップトップ機であるLシリーズの後継機[注 1]にあたる。日本で「ノートパソコン」という名詞を定着させた機種とも言われる[1]

特徴

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初代機

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初代機はPC-9801Nで1989年(平成元年)11月に発売された。東芝のJ-3100SS(シリーズ名はダイナブックIBM PCを東芝独自に日本語化したJ-3100シリーズ互換)、エプソンの286NOTE Executive[注 2]に先行されたため、わずか3か月半で開発・発売された[2][3]。初代はV30の10MHz駆動で、液晶ディスプレイはモノクロ8階調だった。

初期の機種からFDDを1台のみ内蔵していたが、内蔵ハードディスクのなかった当時のソフトはFDDを2台必要とするものも多かったため、フロッピーディスク (FD) の代わりに使用できる「RAMドライブ」を本体のメニューから設定できた[1]。また、NEC独自の増設RAMカードスロットを搭載し、初代機ではEMSメモリとして使用できるRAMカードを内蔵できた。

背面には独自の拡張コネクタ(便宜的に 98ノートバス とも呼ばれる)を持った。これはデスクトップ型PC-9800のCバススロットと電気的・論理的に互換しているもので、98ノートでCバス製品を使うために結線しただけの拡張ボックス PC-9801N-08(I/O拡張ユニット) も発売されていた。PC-9801N-08には一見すると4つのスロットがあるが、そのうち1つは98ノートと接続する専用スロットであり、残りの3つの拡張用スロットが利用可能[4]。98ノートと接続する専用スロットは、スロット面に向かって一番左端のスロットに固定であった[5]。この拡張バスの存在はシリーズ後半に至るまで98ノートの強みであったが、小型で可搬性を優先した98NOTE Lightで省略され、末期にはフルノートのLavieでも省略されることになる。PC-9801N-08 では、68000ボード、その増設RAMボード、PC-UXボード等オプションボード上に搭載されたCPU/DMAで動作するボード、およびI/O拡張ユニット(PC-9811L等)用インターフェースボードを除き、PC-9800シリーズ用の大部分のオプションボードを使用することが可能である[6]

基本仕様の拡充

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1990年(平成2年)に登場した98NOTE SX (PC-9801NS)[注 3]80386SXを搭載しており、RAMカードスロットに増設するRAMカードは(386SX以上のCPU搭載機では)プロテクトメモリとしても使用できるようになった。この機種以降、ハードディスクドライブ (HDD) を内蔵するモデルも登場するようになった。これはPC-9800シリーズで初めて2.5インチのIDE規格のHDDを採用した例である[7]。ただし、BIOS上ではSASIと区別されておらず、当時の機種ではフォーマット時に認識する容量に制限が掛けられていた。また、この機種からディップスイッチが画面で設定できるようになり、システムセットアップメニュー(98NOTEメニュー)に統合された[注 4]。同年のPC-9801NV (V30HL/16MHz搭載)ではHDDは内蔵できなかったものの、レジューム機能に対応したため、サードパーティ製のRAMカードをHDD互換の不揮発RAMドライブとして活用できるようになった。また、セカンドバッテリーパックにも対応した。さらに1991年のPC-9801NS/Eからはオプションで外部ディスプレイ出力が可能になり、HDDが専用パック方式になるなど、PC-9801型番の時代の98NOTEに共通の設計が定まってきている。また、バッテリ駆動が可能なPC-PR150nが発売されている[9]。この年には世界初のTFTカラー液晶を搭載したノートパソコンである、PC-9801NCも発売された[1][注 5]。また、1992年からは98NOTE LIGHTと称したFDDを外付けにして小型軽量化したシリーズも展開された。その初代であるPC-9801NLはA4薄型サイズであり、従来の独自RAMカードスロットとは別に、PC-98HA (HANDY98) と同様のJEIDA4.0 (PCMCIA1.0) 規格のICカードスロットも搭載された[7]。しかし、当時のカードスロットはI/O機能を持たずメモリ系のデバイスしか使えない[7]といった欠点もあり、98NOTEでは採用が進まなかった。同年発売のPC-9801NS/T以降では独自のRAMカードスロットにI/O機能が追加され[7]、これを利用したモデムカードが存在したほか、サードパーティからはLANカードも発売された。増設用のRAMには別の専用スロットも設けられた。数か月後にはNS/T相当で小型軽量化したNS/Lも登場した。この年に登場した上位機PC-9801NAおよびNA/Cからは、i486系CPUが採用されている。これは発売当時のPC-9801型番(すなわちH98は除く)機種としては、デスクトップのPC-9801FA (486SX/16MHz) を超える20MHz版が搭載されており、一時はシリーズ最速機種となった。また、内蔵IDEのフォーマット制限も無くなり、約500MBまでHDDを扱えるようになった。

PC-9821登場後

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デスクトップ機でPC-9821シリーズの登場後、1993年(平成5年)のPC-9801NS/Rからは3モードFDDを搭載し、1.44MBのFDにも対応した[7]。その後は同年5月のPC-9821Neを筆頭にアーキテクチャのPC-9821化が進んだが、シリーズ名は引き続き98NOTEを名乗った。このPC-9821Neや同時期のPC-9801NX/Cからはメモリの内部増設は機種毎のメモリ専用スロットに一本化され[注 6]、独自のRAMカードスロットが廃止されてJEIDA4.1/PCMCIA2.0[10]PCカードスロットが搭載された。98NOTE LIGHTシリーズでは1994年のPC-9801NL/RからB5ファイルサイズに小型化されたが、これ以降の小型機では拡張バスコネクタやRAMドライブが省略されるようになった。同時期のPC-9801NS/Aからはプリンタポートが双方向対応の36ピンになる[7]など、コネクタ類がPC-9821時代の規格に置き換わっていった。16MB以上の増設メモリに対応したのもこの頃である。同年のPC-9821Np・NsからはJEIDA4.2/PCMCIA2.1仕様のPCカードスロットが搭載されたほか、内蔵HDDは約4.3GBまで扱えるようになった。また、Npはシリーズで初めてWindows Sound System (WSS) 相当のPCM音源を搭載した[注 7]。これ以前の98NOTEには一部の小型機を除きPCカードスロットの他に110ピンのコネクタ式の拡張バスを備えていたが、PC-9821Ne2からは廃止され、Np/Nsでは198ピン仕様のものが採用されたものの、それ以降はNf/NxおよびNaシリーズに搭載されたのみに終わっている。Ne2以前のカラーLCDモデルではすべてTFTカラー液晶ディスプレイが採用されていたが、PC-9821NdからはDSTNカラー液晶モデルも投入されるようになった。この頃までは8MHz相当の動作モードも持っていたが、やがてLowモードの設定は従来のMiddleモードに相当する386SXから486SX程度の速度になっていった。小型機ではPC-9821Ldから9821型番のカラーモデルが登場した一方で、その下位機種に相当するPC-9801NL/Aを最後にPC-9801型番の98NOTEは終息した。PC-9821型番の98NOTEは、1995年のPC-9821Nmを除いて液晶ディスプレイがすべてカラー表示可能となっている。また、同時期の上位機PC-9821Nfでは、98NOTEで初めてPentiumを搭載した。PC-9821Ne3、Nd2からはIrDAを搭載するようになった[7]。PC-9821NxやNa7以降の一部の上位機種では、OPNA互換のFM音源を搭載した機種も登場した。

Windows 95登場後

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Windows 95時代になるとシリーズ名は98NOTE Lavieに、小型機は98NOTE Aileに変更された。それ以降は小型機以外でもRAMドライブが搭載されなくなり、FDD2台を前提としたソフトの利用が困難になった。1996年のPC-9821Nr15からはZVポートを搭載するようになったほか、Nr15を含む一部の上位機種ではCardBusも採用されるようになった[7]。また、98NOTEとしては初めて外部ディスプレイ出力にミニD-sub15ピン3列(VGA端子)のものが標準で装備された[7]。本体色もグレーから濃紺に変わった一方、Lowモードや40桁の表示モード、ROM-BASICの起動は廃止された。リセットボタンも無くなったが、代わりにサスペンド(レジューム)用のボタンを備えるようになり、電源のスライドスイッチと同時に入れることで強制電源オフ(長押しで再起動)が行えるようになっている。1997年からはMMXを搭載する機種も登場し、該当機種では型番の数字が3桁になっている。小型機ではPC-9821Ls150/Ls12が登場し、久々にA4薄型サイズのラインナップも復活した。おおむね1997年5月頃に発表されたシリーズからは、内蔵IDE-HDDの認識上限が約4.3GB以上に対応した[注 8]。このため、Nr13やLs150など、この時期をまたがってマイナーチェンジされた一部の機種では、枝番によって4.3GB上限の存在するモデルとそうでないモデルが混在する。ただし例外としてB5サイズの小型機PC-9821La13では後期モデルにも4.3GBの壁が残された。

NECの主力機種がPC98-NXシリーズに移行してからも、98NOTEはNrシリーズを中心に細々と新製品が発表された。1998年Windows 98登場後は、Windows 98搭載モデルもラインナップに加わった。シリーズ最終機種は1999年に発売されたPC-9821Nr300で、Windows 98モデルではSecond Editionが搭載されるようになった。2000年には搭載HDDをフォーマット上限の約8GBに変更した後期モデルも発売された。

主な機種

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以下を参照。

補足

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1989年から1992年まで、メインPRキャラクターには大江千里が、テレビ・ラジオのCMや、全国の駅、空港などのシティーボード広告に起用された。テレビCMには他に小坂一也磯部弘沢たまき石井めぐみらが脇を固めた。さらに大江は「HANDY98」のテレビCMのメインも務めたほか、デスクトップパソコン (PC-9801FA/FS/FX) の雑誌および店頭広告にも起用されることになった。

製品がPC-9821系統に移行後しばらくはテレビ・ラジオのCM展開は無かったものの、モデル末期には、当時既にVALUESTARのCMに出演していた竹中直人をキャラクターに起用したテレビCMを展開。後に、竹中はPC98-NXシリーズにおいても引き続きキャラクターを務めた。

脚注

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注釈
  1. ^ 可搬型デスクトップ環境としてのLシリーズの後継としては改めてPC-9801Tが発売され、PC-H98Tを挟んでPC-9821Tsに至る別系統が生まれる。
  2. ^ EPSON PCシリーズ互換、初代機はフロッピーディスクドライブ (FDD) なし。発表はJ-3100SSより先だったが、出荷は後となった。
  3. ^ 「98NOTE SX」の表記は、その後もいくつかの386系CPU搭載機(NC、NS/Lを除く)で使われた。
  4. ^ ただし「ソフトウェアディップスイッチ」と呼ばれるI/O仕様に対応したのはNS/T以降である[8]
  5. ^ ただし前述のようにノートパソコンは本シリーズによって日本で根付いたカテゴリであり、世界的にはラップトップパソコンの一種(詳細は両項目を参照)であるが、ラップトップ全般としてはこれ以前にもカラー機は存在する。
  6. ^ 拡張バスにCバスを外部増設できる機種では、外部増設にはなるが、ハードウェアEMSなどのような用途にCバスメモリを使用可能な場合もある。
  7. ^ あくまで73/86PCMとは異なるWSSという意味に限ればの話だが、デスクトップがMATE-X PCMを搭載するよりもわずかに早かった。
  8. ^ ただし標準状態でフォーマット可能なのは、約8GBまで。
出典
  1. ^ a b c NECパソコンの歴史”. 121ware.com (2012年10月16日). 2015年11月20日閲覧。
  2. ^ 日経トレンディネット (2015年3月30日). “なぜ、レノボはThinkPadを米沢で生産するのか?” (日本語). 日経トレンディネット. オリジナルの2017年1月13日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170113161748/http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20150325/1063349/?P=4 2018年5月23日閲覧。 
  3. ^ 大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」”. pc.watch.impress.co.jp. 2018年5月23日閲覧。
  4. ^ NEC-N08 1990, p. 19.
  5. ^ NEC-N08 1990, p. 14.
  6. ^ NEC-N08 1990, p. 23.
  7. ^ a b c d e f g h i 小高輝真の「いまどきの98」 第5回”. Impress (1997年9月26日). 2016年8月18日閲覧。
  8. ^ UNDOCUMENTED 9801/9821 Vol.2 - メモリ・I/Oポート編”. ウェブテクノロジ. 2016年12月12日閲覧。
  9. ^ ニューズウィーク日本版(1991年8月8日号). TBSブリタニカ. (1991-8-8). p. 39. 
  10. ^ 「PCMCIA〜これからのノートパソコンのために〜」 月刊ソフマップワールド Vol.51 (1993年11月号)、p.7

参考文献

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  • NEC『PC-9801N-08 I/O拡張ユニットユーザーズマニュアル』NEC、1990年。 

関連項目

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外部リンク

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