馬場あき子
文化功労者顕彰に際して 公表された肖像写真 | |
ペンネーム | 馬場 あき子 (ばば あきこ) |
誕生 | 馬場 暁子 (ばば あきこ) 1928年1月28日(96歳) 東京府 |
職業 | 歌人 評論家 能作家 教育者 |
言語 | 日本語 |
国籍 | 日本 |
民族 | 大和民族 |
最終学歴 | 日本女子専門学校 国文科卒業 |
活動期間 | 1955年 - |
ジャンル | 短歌 能 |
主題 | 論説 評論 |
主な受賞歴 | 現代短歌女流賞(1977年) 川崎市文化賞(1985年) 迢空賞(1986年) 詩歌文学館賞(1989年) 読売文学賞(1994年) 斎藤茂吉短歌文学賞(1996年) 朝日賞(2000年) 現代短歌大賞(2002年) 日本芸術院賞(2003年) 紫式部文学賞(2007年) 日本歌人クラブ大賞(2011年) 前川佐美雄賞(2012年) |
デビュー作 | 『早笛』(1955年) |
配偶者 | 岩田正(夫) |
馬場 あき子(ばば あきこ、1928年(昭和3年)1月28日 - )は、日本の歌人、評論家、能作家、教育者。勲等は旭日中綬章。歌誌かりん主宰(短歌結社:歌林の会)[1]、日本芸術院会員、文化功労者。本名は岩田 暁子(いわた あきこ)[2]。かつての本名は馬場 暁子(ばば あきこ)。
小学生時代に韻文の面白さに目覚め、『古今集』や『平家物語』の韻律に強く心を揺さぶられた。1948年に昭和女子大学国文科卒業後、中学、高校で教鞭をとった。
窪田章一郎に師事し、その主宰誌「まひる野」に入会。1977年、歌作と著述に専念するために教職を辞した。翌年には歌誌「かりん」を創刊。歴史の裏側に追いやられてきた、紡ぎ、包丁を持つことに象徴される「女手」の意味を掘り返し、そこに思想の根元と創作の動機を見据えようとした。歌集に『早笛』(1955年)、『飛種』(1997年)など。能の舞手であり、その方面への造詣も深い。評論に『式子内親王』(1969年)、『鬼の研究』(1971年)などがある。
人物
[編集]歌人[2]、および、文芸評論家で、短歌結社「かりん(歌林の会)」を主宰する[1]。朝日歌壇[3]、岩手日報「日報文芸」、新潟日報読者文芸選者も務める。古典や能に対する造詣が深く、喜多実に入門、新作能の制作も行っている。また、『鬼の研究』など民俗学にも深い知識を持つ。日本芸術院会員に選任され、文化功労者として顕彰された。
門下には梅内美華子、坂井修一、米川千嘉子、今野寿美、日高堯子、松村由利子、日置俊次など。
来歴
[編集]生い立ち
[編集]東京府出身、日本女子専門学校(現・昭和女子大学)国文科卒業[2][1]。1947年(昭和22年)、「まひる野」に入会し、窪田章一郎に師事[2]。喜多流宗家に入門[1]。1948年(昭和23年)、この年より東京都の中学・高校の教師を務める。
歌人として
[編集]1955年(昭和30年)、第一歌集『早笛』を刊行[2]。古典、とりわけ能への造詣が深く独特な歌風を拓き、以後『地下にともる灯』(1959年)、『無限花序』(1969年)、『飛花抄』(1972年)を刊行[2]。1959年(昭和34年)より翌年にかけて、教職員組合の婦人部長として、安保闘争のデモ等に参加。岸上大作らとの関わりを持つ。1971年(昭和46年)、評論『鬼の研究』を出版[4]。1977年(昭和52年)、教員生活を終え「まひる野」を退会。歌誌『かりん』を創刊。以後、『朝日新聞』歌壇選者、NHK市民大学、NHKラジオ・テレビ趣味講座などで活躍。1998年(平成10年)、『馬場あき子全集』(三一書房)完結。
能作家として
[編集]1995年(平成7年)、新作能「晶子みだれ髪」を上演[1]。1997年(平成9年)、新作能「額田王」を初演[5]。2004年(平成16年)、新作能「小野浮船(おののうきふね)」を初演[6]。 2017年(平成29年)、新作能「利休」を上演[7]。
家族・親族
[編集]賞歴
[編集]- 1977年(昭和52年)- 『桜花伝承』で第2回現代短歌女流賞受賞[4]。
- 1985年(昭和60年)- 第14回川崎市文化賞受賞。
- 1986年(昭和61年)- 『葡萄唐草』で第20回迢空賞受賞[1]。
- 1989年(平成元年)- 『月華の節』で第4回詩歌文学館賞受賞[1]。
- 1994年(平成6年) - 『阿古父』で第45回読売文学賞受賞。
- 1997年(平成9年) - 『飛種』で第8回斎藤茂吉短歌文学賞受賞[8]。『飛種』、『馬場あき子全集』で毎日芸術賞受賞[1]。
- 2000年(平成12年)- 長年にわたる作歌、著述活動、そして伝承文化継承にかかわる業績により朝日賞受賞[1][9]。
- 2002年(平成14年)- 『世紀』で第25回現代短歌大賞受賞[10]。
- 2003年(平成15年) - 日本芸術院賞受賞[11]。
- 2007年(平成19年)- 『歌説話の世界』で第17回紫式部文学賞受賞[12]。
- 2011年(平成23年)- 『歌よみの眼』『能・よみがえる情念』を中心とした業績で第2回日本歌人クラブ大賞受賞[13]。
- 2012年(平成24年)- 『鶴かへらず』で第10回前川佐美雄賞受賞[14]。
栄典
[編集]- 1994年(平成6年) - 紫綬褒章を受章[1]。
- 2019年(令和元年)- 文化功労者[15][16]。
- 2021年(令和3年) - 春の叙勲で旭日中綬章受章[17][18]。
- 2022年6月 - 兵庫県小野市議会が、小野市名誉市民に決定(小野市短歌フォーラム、および小野市詩歌文学賞に対する長年の貢献に対して)[19]。
作品リスト
[編集]歌集
[編集]- 早笛 まひる野会, 1955. まひる野叢書
- 地下にともる灯 馬場あき子歌集 新星書房, 1959. まひる野叢書
- 無限花序 馬場あき子歌集 新星書房, 1969.
- 飛花抄 新星書房, 1972. まひる野叢書
- 『桜花伝承』牧羊社、1977(現代短歌女流賞・昭52)
- 馬場あき子歌集 国文社, 1978.4. 現代歌人文庫
- 雪鬼華麗 馬場あき子歌集 牧羊社, 1980.6. かりん叢書
- うつぎ丘陵 馬場あき子歌集 沖積舎, 1982.6.
- 『晩花』短歌新聞社, 1985.6. 昭和歌人集成(ミューズ女流賞・昭61)
- 『葡萄唐草』立風書房, 1985.11 のち短歌新聞社文庫(迢空賞・昭61)
- 雪木 歌集 角川書店, 1987.7.
- 馬場あき子歌集 短歌研究社, 1987.1. 短歌研究文庫
- 『月華の節』立風書房, 1988.12(詩歌文学館賞・1989)
- 南島 馬場あき子歌集 雁書館, 1991.11
- 『阿古父』砂子屋書房, 1993.10. かりん百番(読売文学賞・1994)
- 暁すばる 馬場あき子歌集 短歌新聞社, 1995.9. 現代女流短歌全集
- 『飛種』短歌研究社, 1996.3.(斎藤茂吉短歌文学賞・1997)
- 青椿抄 馬場あき子歌集 砂子屋書房, 1997.4. かりん叢書
- 馬場あき子百歌 歌林の会 編著. 三一書房, 1998.5.
- 青い夜のことば 馬場あき子歌集 雁書館, 1999.11. かりん叢書
- 飛天の道 馬場あき子歌集 砂子屋書房, 2000.9. かりん叢書
- 世紀 馬場あき子歌集 梧葉出版, 2001.12. かりん叢書
- 九花 馬場あき子歌集 砂子屋書房, 2003.12. かりん叢書
- 馬場あき子歌集 続 短歌研究社, 2004.3. 短歌研究文庫
- 太鼓の空間 馬場あき子歌集 砂子屋書房, 2008.12. 新かりん百番
- 鶴かへらず 馬場あき子歌集 2011.9. 角川短歌叢書
- 舟のやうな葉 馬場あき子歌集 短歌新聞社, 2011.11. 新現代歌人叢書
- あかゑあをゑ 歌集 本阿弥書店,2013.11. かりん叢書
- 記憶の森の時間 KADOKAWA/角川学芸出版,2015.3. かりん叢書
全集
[編集]- 『馬場あき子全集』全13巻 三一書房、1995-98(毎日芸術賞・1997)
- 『馬場あき子全歌集』角川書店、2021.9.
評論
[編集]- 式子内親王 1969. 紀伊国屋新書 のち講談社文庫、ちくま学芸文庫
- 鬼の研究 三一書房, 1971. のち角川文庫、ちくま文庫
- 大姫考 薄命のエロス 大和書房〈大和選書〉, 1972.
- 穢土の夕映え 発心往生論 芸術生活社, 1974.
- 遊狂の花 大和書房, 1974.
- 修羅と艶 能の深層美 講談社, 1975.
- 古典への漂遊 読売新聞社, 1977.10.
- 百人一首 平凡社カラー新書 1977.12.
- 日本女歌伝 角川書店, 1978.10.
- 古典への飛翔 読売新聞社, 1979.6.
- 世捨て奇譚 発心往生論 1979.2. 角川選書
- 歌枕をたずねて 1981.2. 角川選書
- 与謝野晶子の秀歌 短歌新聞社〈現代短歌鑑賞シリーズ〉, 1981.1.
- 和泉式部 美術公論社, 1982.9. のち河出文庫
- きもの随想 織と染 美術公論社, 1982.10.
- 歌への招待 日本放送出版協会, 1983.10. NHK市民大学
- 歌と花 わが心の風景 白水社, 1983.11.
- 古典余情 読売新聞社, 1983.12.
- 風姿花伝 岩波書店, 1984.11. 古典を読む のち同時代ライブラリー,岩波現代文庫
- 短歌への招待 読売新聞社, 1987.12.
- 馬場あき子の謡曲集 集英社, 1987.5. わたしの古典 のち文庫
- 季節のことば 講談社, 1988.6.
- 短歌その形と心 NHK短歌入門 日本放送出版協会, 1990.5
- かく咲きたらば 朝日新聞社, 1992.6.
- 短歌セミナー 短歌新聞社, 1993.9.
- 現代短歌に架ける橋 馬場あき子歌人論集 雁書館〈雁叢書〉, 1994.10.
- 古典往還 読売新聞社, 1994.11.
- 源氏物語と能 雅びから幽玄の世界へ 堀上謙 写真. 婦人画報社, 1995.12.
- 歌の彩事記 読売新聞社, 1996.11.
- 閑吟集を読む 弥生書房, 1996.3.
- 女歌の系譜 1997.4. 朝日選書
- はるかな父へ うたの歳時記 小学館, 1999.7.
- 最新うたことば辞林 作品社, 2001.2.
- 能の四季 堀上謙 写真 たちばな出版, 2001.9.
- 男うた女うた. 女性歌人篇 2003.10. 中公新書
- 掌編源氏物語 潮出版社, 2004.3.
- 花のうた紀行 新書館, 2004.11.
- 歌説話の世界 講談社, 2006.4.
- ゆふがほの家 不識書院, 2006.10.
- 黒川能の里 庄内にいだかれて 大石芳野写真 清流出版, 2008.2.
- 読んで愉しむ能の世界 淡交社, 2009.3.
- 歌よみの眼 日本放送出版協会, 2010.1.
- 能・よみがえる情念 能を読む 檜書店〈ひのき能楽ライブラリー〉, 2010.2.
- 日本の恋の歌 角川学芸出版, 2013.3.
新作能
[編集]- 「晶子みだれ髪」
- 「額田王」
- 「小野浮舟」
共編著
[編集]- 短歌のすすめ 現代に生きる不滅の民衆詩 大野誠夫,佐佐木幸綱共編 1975. 有斐閣選書
- 花と余情 能の世界 写真: 吉越立雄 淡交社, 1975. 淡交選書
- 歴史のヒロインたち 永井路子共編. 光風社書店, 1975.
- 「方丈記」を読む 松田修共著 講談社, 1980.6. のち講談社学術文庫
- 日本名歌小事典 日本人の心のふるさと 編. 三省堂, 1984.6.
- 秘宝三十六歌仙の流転 絵巻切断 NHK取材班共著 日本放送出版協会, 1984.4.
- 和歌の読みかた 米川千嘉子共著 岩波ジュニア新書 1988.6.
- 絵と物語の交響 絵巻の世界 宮次男共編. 日本美を語る ぎょうせい, 1989.11
- 新古今和歌集・山家集・金槐和歌集 佐藤恒雄共著 新潮社〈新潮古典文学アルバム〉1990.9.
- 能 華の風姿 堀上謙共著. 三一書房, 1990.7.
- 韻律から短歌の本質を問う 編. 岩波書店, 1999.6. 短歌と日本人
- 歌ことば歌枕大辞典 久保田淳共編. 角川書店, 1999.5.
- 現代秀歌百人一首 篠弘共編著. 実業之日本社, 2000.11.
- 恋うたの現在 日本近代文学館編 中村稔共責任編集. 角川学芸出版 ; 2006.5.
- 「かりん」三十年史 編. 歌林の会, 2008.5.
- 馬場あき子と読む鴨長明無名抄 花山多佳子,栗木京子,水原紫苑,米川千嘉子,松平盟子,小島ゆかり,川野里子,桜川冴子,石井照子共著. 短歌研究社, 2011.1.
- 新・百人一首 近現代短歌ベスト100 岡井隆, 馬場あき子,永田和宏,穂村弘, 文藝春秋〈文春新書〉, 2013, ISBN 9784166609093
- 寂しさが歌の源だから 穂村弘が聞く馬場あき子の波瀾万丈 角川書店、2016.6
- もう一度楽しむ能 友枝真也共著, 淡交社, 2021.3.
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g h i j 大島史洋ほか編『現代短歌大事典』三省堂、2004年、p.485、ISBN 4-385-15419-8
- ^ a b c d e f g 村松定孝、渡辺澄子編『現代女性文学辞典』東京堂出版、1990年、p.271、ISBN 4-490-10284-4
- ^ “馬場あき子の「百人一首」”. NHK出版. 2017年7月7日閲覧。
- ^ a b 村松定孝、渡辺澄子編『現代女性文学辞典』東京堂出版、1990年、272p.、ISBN 4-490-10284-4
- ^ 「朝日新聞」1997年09月02日夕刊、p.11
- ^ 「朝日新聞」2004年12月21日夕刊、p.8
- ^ 「朝日新聞」2017年02月06日夕刊、p.3
- ^ 「朝日新聞」1997年05月14日夕刊、p.7
- ^ “朝日賞 1971-2000年度”. 朝日新聞社. 2022年8月17日閲覧。
- ^ 「朝日新聞」2002年11月20日朝刊、p.37
- ^ 「朝日新聞」2003年03月29日朝刊、p.37
- ^ 「朝日新聞」2007年08月15日朝刊、p.20
- ^ “日本歌人クラブ大賞歴代受賞者”. 日本歌人クラブ. 2020年3月3日閲覧。
- ^ 「朝日新聞」2012年04月11日朝刊、p.31
- ^ 「朝日新聞」2019年10月30日朝刊、p.32
- ^ “令和元年度 文化功労者”. 文部科学省 (2019年11月3日). 2020年11月2日閲覧。
- ^ 令和3年春の叙勲受章者名簿(旭日中綬章受章者) - 内閣府
- ^ 『官報』号外第99号、令和3年4月30日
- ^ "第437回6月定例会:提出議案と審議結果."『小野市議会だより』203号(2022年8月)p.5 (2024年4月18日閲覧)。